メジャー監督若返りに逆行 60歳「アナログ」老将の挑戦

2017年12月17日 16時30分

【足で稼いで20年 外国人選手こぼれ話 広瀬真徳】今オフ、メジャーでは監督の若返りが急ピッチで進んでいる。

 10月にレッドソックスの監督に就任したアレックス・コーラ(42)を皮切りに、メッツが42歳のミッキー・キャラウェイを抜てき。フィリーズも同齢のゲーブ・キャプラー(2005年に巨人在籍)を新監督に据えた。

 この“42歳トリオ”に加え、今季ワールドシリーズを制したアストロズの指揮官A・J・ヒンチ(43)やドジャースを率いるゲーブ・ロバーツ(45)も40代前半。データ野球やチーム采配の多様化が進むメジャーリーグ。柔軟な思考能力を持つ人材を監督に登用しなければ球団、チームは淘汰される。監督の若年化は「時代の流れ」なのかもしれない。

 だが、こうした若い監督が次々と誕生する中、私が注目する監督は別にいる。今オフ、タイガースに招聘された“老将”ロン・ガーデンハイアー新監督(60)である。

 同監督は02年から13シーズンという長期にわたりツインズを指揮。在任中、6度の地区優勝を飾るなど輝かしい実績を持つ。それでも御年60歳。情報分析を駆使する若手監督とは一線を画す「アナログ世代」だけに、時代遅れの感は否めない。そんな人物がなぜ今、タイガースから声が掛かったのか。理由は若手監督にはまねできない“あるもの”を持ち合わせているからだろう。

 ガーデンハイアーは対話を重視する監督として有名だ。例えば、選手が試合でミスをしたり精彩を欠いた場合、通常なら担当コーチや関係者を通じて監督の思いを伝えることが多い。彼はそれを好まない。選手を監督室に呼んで指摘するか、自らが選手の元に出向き直接指示を送る。これを徹底していた。以前、本人にその理由を聞いたことがある。説明は明快だった。

「自分で直接選手に指示を伝えれば、考えや意図はミスなく届く。だが、他人に伝達を託せば、自分自身の思いが微妙に変化して選手に伝わることがある。私はそれを避けたいんだ。電話やメールでも伝えられるだろうが、私は目を見て話すことも重要だと感じている。直接話をすれば、表情や声のトーンでお互いの感情も把握できる」

 今季ア・リーグ中地区の最下位に沈んだタイガース。その敗因は絶対的エースだったジャスティン・バーランダー(シーズン途中にアストロズに移籍)を含めた相次ぐ主力選手の放出といわれるが、低迷要因はそれだけではない。チーム首脳陣と選手の不協和音もささやかれていた。崩壊したチームの再建には人をつなぐ老練な人心掌握術を持つガーデンハイアーのような存在が不可欠。だからこその抜てきと言える。

 SNSなどのコミュニケーション手段により人間関係が希薄化する中、あえて選手との接触を重視する指揮官。若手監督ばかりが注目される中、老将の熟練の統率力からも目が離せない。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。