巨人・宇佐見真吾捕手(24)が8日、左手首を負傷したため、秋季キャンプから離脱した。「アジアプロ野球チャンピオンシップ」の日本代表にも選出されていたものの、無念の辞退。打てる捕手への飛躍が期待されるホープが“離脱1号”となってしまったが、由伸監督は表情ひとつ変えず冷静そのもの。その背景にある思いとは――。

 地獄の宮崎キャンプからついに脱落者が現れた。宇佐見は6日に左手首を痛め、この日の練習には不参加。首脳陣にあいさつを済ませて荷物を片付け、宮崎から帰京した。6日の練習試合では左中間へ2点適時二塁打を放ち、持ち前の打力をアピールしたが、この日から宮崎で始まる代表合宿も取りやめとなり、宇佐見は「仕方ないです。まずは来年のためにしっかり治します」と肩を落としながら球場を後にした。

 首脳陣にとっても宇佐見のリタイアは頭の痛いところ。今キャンプでは打撃と並行し、課題の守備力の強化へ村田ヘッド兼バッテリーコーチと猛特訓。来季は小林を脅かす存在への成長を期待していたからだ。

 ところが、由伸監督の反応は「ケガを恐れていたら(厳しい練習を)できないんでね」と淡々としたもの。それどころか「しょうがないんですけど、こういったところで少しずつ、少々やってもケガをしないようになっていってほしいですけれどもね」と突き放した。

 その言葉の裏にあるのは指揮官の「覚悟」だ。チームスタッフは「選手がケガなくキャンプを乗り切れるに越したことはないですが、監督は『壊してもいい』というぐらいの覚悟で練習をやらせています。練習試合もあるので捕手は最低でも2人は置きますが、他のポジションに関しては今後離脱者が増えても補充はしない方針です。それだけ、期待して選んだ今いるメンバーを何とかして鍛え上げたいということです」と指揮官の胸中を代弁した。

 今季は最終的にベテラン頼みとなり11年ぶりのBクラスに転落。若手の底上げが急務で、野手陣は日没まで徹底的な振り込みを行い、すでに手の皮がめくれてボロボロとなっている。同時に連日200球前後を投げ込む打撃投手も悲鳴を上げながら、チーム一丸となって選手をサポートしている。

 19日までのキャンプは6勤1休のハードスケジュール。今後、誰が脱落しようが心を鬼にした由伸監督の思いは変わらない。