メジャー30球団が注視する日本ハム・大谷翔平投手(23)の代理人が7日、米ロサンゼルスに本部を置くCAA(クリエーティブ・アーティスツ・エージェンシー)のネズ・バレロ氏に決まった。多くの有力代理人を出し抜き契約を勝ち取ったCAA=バレロ氏は大谷以外にも今オフ、メジャー挑戦を表明しているロッテ・涌井秀章投手(31)、西武・牧田和久投手(32)の代理人を務めることが濃厚。さらに来オフのポスティング移籍市場の目玉、西武・菊池雄星投手(26)の代理権確保に王手をかける独り勝ち状態。その裏側にフォーカスする。

 CAAはハリウッド4大タレント・エージェンシーとして知られる大手事務所で、主なクライアントにブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、ボブ・ディランといった多くの俳優やミュージシャン、映画監督を抱えている。スポーツ部門も4大スポーツに幅広く顧客を持ち、吉本興業と業務提携している関係上、所属する日本人メジャーリーガーも青木宣親外野手(35=メッツからFA)、田沢純一投手(31=マーリンズ)らがいる。

 また、CAA=バレロ氏は今オフには海外FA権を行使してメジャー挑戦を表明しているロッテ・涌井、西武からポスティング移籍を容認されている牧田の代理人を務めることも確実。さらには来オフ、ポスティング移籍市場の目玉となる西武・菊池との契約も決定的で、まさに“独り勝ち”といった状況である。

 大谷は右足首手術のリハビリを続ける千葉・鎌ケ谷の二軍施設で「(代理人は)自分で決めたこと。ポスティングに関しては球団の権利なので。僕は僕として向こうに行くために代理人を決めたという感じですね」と話した。

 メジャー球団にとっては待望の窓口が決まったことでひと安心。関係者は「これでようやく日本的な形式に煩わされることなく(米国式の)交渉ができるようになる」(ナ・リーグスカウト)と本音を漏らした。

 それにしても、スコット・ボラス氏ら並み居る有力代理人を蹴散らし、大谷ばかりか来オフの移籍市場の目玉、西武・菊池の代理権確保にリーチをかけるなどしたCAA=バレロ氏の勝因はどこにあったのか。

 複数の“敗退”した代理人事務所関係者、メジャー関係者の話を総合すると「CAAを選んだのはもちろん大谷君や菊池君本人だけの意思ではない。今でも2人に大きな影響力のある交渉のキーマン、花巻東・佐々木洋監督の決断だからですよ。私らも含めて例外なく最終選考まで残ったエージェント(代理人)は“花巻東詣で”をしています。あの学校は何事も恩師の許可なしに物事が前には進みません」とのこと。

 学校の理念でもある「花巻から世界へ」をかなえるため大谷、菊池に在学中からメジャー志向を植え付け、2009、12年ドラフトの両目玉が大騒動を繰り広げたのは周知の事実。プロ入りしてからも契約用具メーカーやかかりつけのスポーツクリニック、マネジメント事務所、今回の代理人選定まで、両者は恩師の指定通りにすべてが一致。球界で名を成した今もある意味、決められたレールの上を走らされている。

 花巻東方式にのっとり、誠意を尽くして契約を勝ち取ったCAAは大勝利。今後も佐々木監督の意向が大谷の行方を左右することになる。