吃音でイジメられた少年がWシリーズ5発でMVPに

2017年11月11日 11時00分

先のワールドシリーズでMVPを獲得したスプリンガー(ロイター=USA TODAY Sports)
元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

 

【ジョージ・スプリンガー外野手(アストロズ)】「野球をしている時だけは口ごもることが少なかったんだ」

 クラブハウスで目が合った時にニコリとしてくれた笑顔に後押しされて、なんとなくインタビューを始めてしまったのが、アストロズのジョージ・スプリンガーだった。

 彼は幼いころから吃音持ちである。理由は分からない。それが小学校で年々ひどくなり、スピーチセラピストをつけるなどしたが、友人たちの冷やかしやイジメに、次第に話すことをしなくなってしまう。

「ずっと隔たりを感じ続けた。クラスメートと会話すると『ダ、ダ、ダ』とか『ばか』とかって、からかわれた。でも、自分はどうして彼らと同じ話し方をしないのか分からなかったし、どうして彼らが僕のように話さないのかも分からなかった。言いたいことがあるのに言えないって最悪の気持ちだよ」

 人前を避け、電話にも出ず、レストランで食事のオーダーをするときは、妹に代わってもらっていたという。その彼が野球をしている時だけは、不思議と言葉に詰まることが少なかったそう。

「ただ、とにかく野球をするのも見るのも好きだったんだ。まさか大リーガーになる夢がかなうなんて、かなうまで信じられなかったけどね」

 そう話す様子は確かに時折言葉に詰まったり、間を置いてから話す瞬間はあるものの、ほぼスムーズだ。大リーガーにとってメディア対応は避けて通れないとはいえ、目の前の彼からは殻に閉じこもり、人前に出たくなかったという姿は想像できないほど丁寧にはっきりと目と目を合わせてしっかりと言葉が発せられる。チームでも、どちらかといえば「ずっとおしゃべりしているタイプ」なのだそうだ。

「野球が、自分らしくいられるようにしてくれた。野球のおかげで、人に本当の自分を見てもらえるようになった。自分らしさの一部だとして受け入れたら、楽しめるようになってきたんだ。人生は短いから、自分でコントロールできないものならば楽しむしかないでしょ?」

 そう思うようになってからの彼は、より積極的にメディアのインタビューに答えるようになった。今では言葉に詰まることなどまったく意に介さない。それどころか「口ごもったら、あえてその様子を見てほしい。それを見て、僕と同じように悩む子が一人でも勇気づけられるかもしれないから」。

 ワールドシリーズで5本塁打を放ちMVPを獲得したジョージ。

 きっと何万人という人が勇気をもらったことだろう。

 ☆ジョージ・スプリンガー 1989年9月19日生まれ。28歳。米コネティカット州ニューブリテン出身。190センチ、93キロ。右投げ右打ち。外野手。2008年のドラフトでツインズに指名されるも契約に至らず、11年にドラフト1巡目指名されたアストロズに入団。14年4月16日のロイヤルズ戦でメジャーデビュー。同年は新人として史上2人目となる7試合7本塁打をマークするなど、出場78試合で20本塁打を放つ。今季は1番打者として起用され、開幕9試合で歴代最多となる4本の初回先頭打者本塁打を記録。ドジャースとのワールドシリーズでは5本塁打を放って優勝に貢献し、シリーズMVPを獲得した。

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