巨人が怪物獲りへ温める秘策とは――。球団は29日、都内の球団事務所でスカウト会議を開き、1か月後に迫ったドラフト会議の指名方針を確認した。注目の1位指名候補は公言しなかったものの、球団内では早実・清宮幸太郎内野手(3年)でほぼ一本化。清宮が希望している面談は10月2日にも応じる意向だが、球団内では「絶対に“あの人”を担ぎ出すべきだ」との声が上がっている。

 長時間の会議を終えた岡崎スカウト部長は1位指名について「まだ決まっていない」と語った。だがこの日報道陣と交わしたやりとりは、ほとんどが清宮に関することばかり。球団としての意思はひしひしと伝わってきた。

 編成部門トップの鹿取GMもすでに競合覚悟の意思を示しており、今年は由伸監督も自らがくじを引く気満々。ただ、くじ引きの前に立ちはだかるのが、清宮本人が希望している面談だ。清宮の強いメジャー志向は変わっておらず、NPB球団への入団はポスティングによるメジャー挑戦の確約を得られるかどうかがポイントといわれる。

 岡崎部長はこの日、面談に応じる意向を示したが、実際にメジャー挑戦時期が入団の焦点となると巨人は分が悪い。球団として、これまで一貫して入札によるメジャー移籍を認めていないからだ。岡崎部長は「今回の面談に関しては『ポスティングを容認しますか?』と先方から聞かれることはちょっと考えづらいので、その答えは用意していません」と語ったが、本当にそうであれば門前払いを食らう可能性もある。

 だが、スカウトの一人は「実際は『前向きに検討している』ぐらいは言うでしょう」とし、一方で「MLBの“25歳ルール”と、検討中の新ポスティング制度の関係で、各球団とも大谷(日本ハム)のような短い年数では出しづらくなっている。高卒の清宮に対しては、どこも『7、8年後のポスティングは認める』ぐらいの姿勢しか示せないのでは」とライバルの動きを読む。

 メジャー挑戦時期が焦点とならないのであれば、巨人にも“勝算”はある。面談出席が濃厚な清宮の父・克幸氏への猛アタック計画だ。岡崎部長は2日に予定される面談について、自分と担当スカウトのほか「鹿取GMとか、石井社長も場合によっては出る可能性がある」としたが、これを聞いたフロント内から上がったのが「社長よりも、久保会長に同席を頼むべきだ」との声だった。

「清宮パパといえば、ラグビー。ラグビーといえば、ウチの会長でしょ。球団に来る前は、読売本社でラグビー興行にも長く携わってきた人。協会にも顔が利く。自分も高校時代はラガーマンでしたし、今でも『ラグビー応援団』を自称していますからね。ラグビー界は2019年のW杯日本開催を成功させようという機運が高まっているところ。会長が『息子さんも、ラグビーも全力で応援させていただきたい』と言えば、少なくともパパの心は傾くんじゃないか」

 巨人とラグビー界の縁は深い。前回の2015年ラグビーW杯前には当時の原監督が日本代表のミーティングに招かれ、桜の戦士たちに世界の戦いに臨む心得を説いたこともある。系列の日本テレビはラグビー中継に熱を入れており、過去W杯3大会を地上波で独占中継した。克幸氏は虎党として有名だが、「ヤマハ発動機ジュビロ監督」としては、読売グループの貢献度に理解はあると見ている。

 前出のフロントは「清宮本人も、ウチならば親子を軸に日本開催の(2019年)W杯を盛り上げることもできる。会長はアイデアマン。巨人とラグビー界を連動させた動きもいろいろと企画するでしょう」と久保会長の“出馬”に期待を寄せるが…。巨人の“秘密兵器”がひと肌脱ぐか、注目だ。