泥酔トラブルで今季終了まで出場停止などの処分を受けた巨人・山口俊投手(30)に新展開だ。日本プロ野球選手会は28日、巨人が山口俊に科したペナルティーは「明らかに重すぎる不当なもの」として処分の再検討を求めるとともに、熊崎勝彦コミッショナーに適切な調査や裁定を要求したと発表した。ただ、巨人側はこれに応じるつもりはなく、新たに生まれた“火種”で最も苦しい立場に置かれるのは――。

 一度は決着したとみられた騒動が、意外な形で“再燃”した。球団は18日に山口俊に対し、今季終了までの出場停止と罰金、減俸などの処分を公表。罰金と今季の減俸額だけで1億円超、来季の減俸額も合算するとおよそ3億円に及ぶとみられている(本紙既報)。山口俊も会見で謝罪の言葉を繰り返し、すでに来季に向けた練習を再開。その矢先のこの日、選手会が「読売巨人軍による山口俊選手への処分等に関して」と題した文書を発表した。

 そのなかで「対象選手の行った行為は、刑事処分的に逮捕事案でもなく、既に被害者との示談も成立している事案です。このような事案でのプロ野球界の前例、その他社会における懲戒処分実務に照らし、対象選手に対する総額1億円以上の金銭的ペナルティーは明らかに重すぎる不当なものです」としている。

 さらには「対象選手が巨人軍と締結していた複数年契約の見直しを迫り、これに同意しなければ契約解除(解雇)するとの条件を提示し続けることにより同意させました。この契約見直しに基づき対象選手が受ける金銭的ペナルティーは総額数億円以上にのぼります」と解雇を盾に、契約年数を短縮したとした。巨人サイドには「処分の再検討、及び契約見直しの撤回」を要求し、コミッショナーと実行委員会にも調査などを要請した。

 これを受け、読売巨人軍広報部は「山口俊投手に対する処分は妥当と考えています」とコメント。契約の見直しなどには応じない姿勢を打ち出した。

 ただ、今回の山口俊の巨額制裁金に端を発する“反発”に首をかしげる者は少なくない。球界関係者の一人は「選手会の文書に『長期の拘束を前提とする保留制度に裏打ちされたFA制度の根幹に関わる問題であり、本件における契約見直しは極めて不当と言わざるを得ません』とあったように、選手会が今回のような前例を作りたくないことは理解できないわけではない」とした上で、こう訴えた。

「文書には契約年数の見直しや、本人かごく近い人しか知り得ない情報もある。そもそも、これは山口俊本人が新しい契約に納得できなかったから出てきたものなのか。だとしたら、なぜ判を押したのか。それとも山口俊の周辺から選手会に訴え出たものなのか、不透明な部分がある」

 どちらにせよ、山口俊への風当たりがいっそう強まることは避けられそうもない。別の関係者も「ただでさえ酔っ払って騒動を起こした上に、どういう形であれ今回はカネ絡み。イメージダウンは避けられないでしょう。ファンや球団の見る目はますます厳しくなる。そんななかで山口俊は生き残っていけるのか」と心配そうに話す。

 山口俊は球団から科せられた厳罰について、18日の会見で「自分自身、しっかり反省も込めて受け入れさせていただきました」と語っていた。FA右腕にはイバラの道が待っている。