“灰色”の前進…という感じか。2位の阪神は27日の巨人戦(東京ドーム)に0―6で敗戦。一軍復帰の“悩める右腕”藤浪晋太郎(23)が7回途中3失点で無念の5敗目(3勝)を喫した。力投ながら失点が右打者への死球絡みと課題が残ったのも事実。「イップス説」までささやかれた右腕に気をもんできたチーム内には“微妙な空気”が…。

 3度目の二軍降格から復帰した藤浪は初回に陽岱鋼から159キロの外角直球で見逃し三振を奪うなど6回までは2安打、2四球、9奪三振、無失点と力投だった。だが、0―0の7回一死から突如“病”が顔をのぞかせる。右打者の村田の背中付近に死球を与えると動揺したのか、続く亀井に右中間越え適時二塁打を浴び、先制を許した。なおも長野の打席では暴投も。そのまま四球で歩かせ一、三塁となったところでベンチは危険と判断し、交代を決断した。

「今日は初回から6回まで(状態は)良かったが、7回のあそこを粘れないと勝てない。あそこで代えられるということはまだまだということ。しっかりとイニングを完了しないと。途中で代えられるのは気持ちいいものじゃない」と藤浪も厳しい表情。7回途中、3安打3失点。課題の制球も4四死球にとどめたものの、完全復活とはならなかった。

 藤浪とチーム内の“微妙な空気”も続きそうだ。実は右腕を巡って、ナインの間ではこんな声が続出していた。「今の藤浪には不用意なことは言えない。だから正直、声をかけづらいんですよ」「変に同情するわけにもいかない。十分に頑張っているので『頑張れ』とも言えない」…。チーム関係者からも「こんな時だからこそ、みんな、藤浪を孤立させてはいけないとは思ってるんだろうけど(この状態では)まだ難しい…」。適度な距離感を保つことに“苦労”。藤浪の悩みの「深さ」「重さ」に励ます側も困惑しているのだ。

 金本監督は藤浪について「6回までの姿はひと安心。交代は長野に抜ける球があったから。嫌なものが出る前に代えようというのがあった。次回? ありますよ」と一定の評価を下した。しかし、不安払拭とまでいかなかったのは明らかだ。ナインやチーム関係者の気遣いに報いるためにも藤浪は次こそ完全復活という結果を出したいところ。周囲も期待している。