【ズームアップ甲子園】第99回全国高校野球選手権大会第3日の10日、花咲徳栄(埼玉)が開星(島根)を9―0で破り初戦を突破した。快勝劇の立役者は背番号10のエース・綱脇慧(3年)だ。自慢の制球力でコーナーを突き早打ちを誘い、凡打の山を築いた。強打の開星をお役御免となる8回まで7安打に抑えて零封。テンポよく投げ、わずか92球だった。

 初戦特有の緊張感がある中、綱脇は「周りが見えて甲子園のいろんな景色を見ながら楽しんで投げることができた」と堂々と振り返った。さらにこうも話す。「どんなにピンチの場面でも相手の応援や球場の雰囲気にのまれることはないです。僕は『音』が好きだから…ですかね。父から『相手チームの応援歌や声援も、音と捉えたら楽しめるんじゃないか?』って言われて、そうだなと思えるようになった。だからマウンドではいつもノリノリです」

 綱脇の父・啓太さん(51)は数々の大手企業のCM制作に携わる音楽プロデューサー。「父の影響で小さいころから音楽が身近にあったので、いろんな音楽に触れるのが好き。特にテクノ系が好きで、寮にはDJの機器を持ち込んでやっています。自由な時間は音楽と触れ合う時間です」。どんな場面でも音を楽しむ術を父から教わり、マウンド度胸満点の投球を身につけた。

 快投をアルプス席で見守った啓太さんは「息子がそう言ってくれるのはうれしいですね。次も他者への尊敬と感謝を忘れず、謙虚な気持ちで戦ってほしい」とエールを送った。綱脇の夢は「音楽よりも野球の方が筋がいいと思っているので、プロ野球選手」。父は「プロになってテーマ曲のオファーが来たら、作ってあげます」と約束した。綱脇は埼玉県勢初となる夏の全国制覇を目指し、次も甲子園というステージで音と野球を楽しむ。