第99回全国高校野球選手権西東京大会は25日、神宮球場で準々決勝が行われ、早実が5―1で日本学園を下し、4強入りした。“怪物スラッガー”清宮幸太郎内野手(3年)は2打数1安打2四球。歴代1位に並ぶ高校通算107号こそ出なかったもののチームの勝利に貢献し、甲子園まであと2勝だ。しかしながら周囲からは気になる見方も…。15日の南平戦で起きた4番・野村大樹捕手(2年)の顔面への相手打者のバット直撃。その“後遺症”余波が清宮にささやかれているのだ。

 この日の清宮は四球、四球、二塁打、一ゴロ。4―1での7回の守備では無死一塁からの相手打者の一塁側へ転がった送りバントをダッシュして捕ると、すかさず二塁へ送球し、好判断で併殺を完成させ「バントで(アウト)2つは狙ってた。ゲッツーで流れをつかめてよかった」。高校通算107号こそ次戦以降に持ち越しとなったものの、変わらず存在感を見せつけた。

 そんな怪物にここへきて新たな不安要素がささやかれている。15日の南平戦で起きた4番・野村への“バット直撃事件”の影響だ。南平戦の6回、素振りしていた相手打者の金属バットが、キャッチャーマスクを拾おうとしていた野村の顔面を直撃。出血した野村はしばらくうずくまったまま動けず、治療のため試合は10分余り中断した。

 治療後、一度は守備に戻った野村だが、頭痛もあり、大事を取って途中欠場。試合後に都内の病院で2か所の鼻骨骨折、数ミリほどのズレがあると診断され、17日の芦花戦の守備では特製のフェースガードをつけて試合に臨んだ。現在はフェースガードを外しており、ケガの後も打線をけん引してきた野村だが、ここ2試合は9打数2安打。早実OBからは「血がすごく出ていたし、脳振とうの症状もあった。すぐにはなんともなくても後になって影響が出てくることもあるのでは」と“後遺症”を心配する声が出ている。

 スポーツ医学に詳しい日大歯学部の月村直樹准教授は「スポーツごとにルールが違うので一概に言えませんが、基本的にラグビーでは脳振とうがあった選手は3週間は試合に出られない。脳の場合、外傷そのものよりも衝撃で脳が揺れることで、セカンドインパクト、サードインパクトというものが起こる。今回は病院でプレーして問題ないという診断を受けたということなので、そこまでのことはないでしょうが、例えば骨折によるズレで付属的にそれまでのバランスが崩れることは起こり得ます。フェースガードをつけての対応ということでしたら、それは続けたほうがいいかもしれません」と無関係ではない可能性を示唆する。

 超高校級打者の4番・野村は3番・清宮が勝負を避けられないための“重し”としての役割も果たしてきた。それだけに野村が不振となれば、清宮が勝負を避けられる場面は格段に増す。実際、この日、序盤の2打席で相手バッテリーは清宮を歩かせ、野村との勝負を選択。第1打席は相手二塁手の失策に助けられたものの、第2打席は三振に打ち取られた。

「(バットを)振ると(頭が)揺れるんで、ちょっと痛いかなという感じ。1回、2回は(清宮が)勝負されなかったけど普通にやれば打てる。言い訳にしてはいられない」と野村は気丈に話し、和泉監督も「ちょっと打ちたいという気持ちがはやっている。もともと打てる子なんで、どこかでつかめば。(ケガは)影響ないと思う」と語ったが…。

「後ろの野村が大きい。あいつがヒットを打ったら、もっと簡単に点が入ってるんで」と相棒4番の復活を期待した清宮。最後の夏を迎えた怪物はこの状況をどう乗り越えるか。