前半戦を貯金7の2位で折り返した阪神。原動力はリーグ屈指の投手陣で特に桑原、マテオ、ドリスの強力救援陣の安定感が好調を支えている。そんな「勝利の方程式」が脚光を浴びる中、かつての守護神・藤川球児(36)は敗戦処理をメーンに黙々と戦っている。古巣復帰2年目の今オフには契約の動向も注目される。陰ながらチームを支える功労者が今の胸中を激白した。

 2015年オフに2年総額4億円(推定)で阪神に復帰した藤川は、2年目の今季ここまで27試合に登板して1勝0敗、防御率3・58。出番はよくて同点、またはリードを許した展開での敗戦処理。日米通算225セーブを挙げている男としてはプライドもあるはずだが、現在の力量を謙虚に認め、今後も「一兵卒」として虎投を支える覚悟を強調した。

「僕の中で、このユニホームを着た以上は、そこに『個人』というものは存在しない。日本に帰ってきてタイガースと契約した時点で、チームが勝つために任せられたところで全力を尽くすと決めた。今もそこはブレていない」。あと「25」に迫った通算250セーブ達成についても「記録へのこだわりとかは全くない。(250セーブ以上が入会条件の)名球会入りまであと残りいくつとか、そういうことを考えたこともない」と断言した。

 250セーブは抑え投手の金字塔。今季も再び守護神としての地位をつかめば大台に届く可能性がないわけではない。それでも「今、僕が考えていることは、とにかくみんなが元気にやってくれることが一番ということ。その中でマテオやドリスが少しでも長く日本で、タイガースで頑張ってくれることを願っている。ドリスもマテオも球は速いし、強いし、もう僕の出番はない。それでいいと思っている」と守護神返り咲きどころか、自身の働き場所を奪ってくれる虎投の世代交代を歓迎した。15年オフの復帰入団時に「起用法は監督に任せる。敗戦処理でも何でもやる」と“便利屋宣言”までして周囲を驚かせたが、むしろその思いは強くなっている。

 21日に37歳となるベテランは、前半戦終盤に3試合連続失点を喫するなど、もがいている。心ない虎党から「もう昔の球児ではない」「高い“買い物”だった」「球児の登板=試合を諦めた」など厳しい視線が送られていることは百も承知。だからこそ「この年になったら調整の仕方だったり、それに伴う結果の責任はすべて自分でとらないといけない」と不退転の覚悟で戦っている。

 8日の巨人戦では今季初めて150キロをマークした。本格的な夏を迎え、走る量を増やすなど、完全復活を諦めてはいない。首脳陣は「今の抑えに有事が発生した場合は、球児に期待している」という。酸いも甘いも知る男の奮闘は後半戦も続く。