火の玉男が新たな「偉業」を手にした。阪神が15―7で勝利した30日のロッテ戦(ZOZOマリン)の9回に藤川球児投手(36)が登板。角中を149キロの直球で見逃し三振に仕留め、史上146人目のNPB通算1000奪三振を達成した。これは野茂英雄氏(近鉄)の871回を大きく上回る771回2/3での最速記録。天下の“ドクターK”をもしのぐ奮起の裏には、今もなお根強いあの清原和博氏への「感謝魂」があった――。

 新たな金字塔を打ち立てても“球児節”は健在だった。この日の投球は打者4人を相手に2奪三振。角中から1000個目を奪い、井口から1001個目をゲットした。史上最速の記録達成に藤川は「何とも思っていない。打線がつながって勝ったことの方が重要。(野茂さんは)先発投手だし、メジャーでも実績を残された方。(自分は)全然上じゃない。ファンの方が三振を期待してくれるところがあったので、それをモチベーションにしていた」と平然と明かした。

 かつての虎の最強救援トリオ「JFK」の一人として君臨。数々のタイトルを手にしたが、今では若手に活を入れるベテランの立場となった。実はこの偉業達成前には「カッコつけてるわけじゃないけど、僕は一切過去のことはああだった、こうだったとは考えないですよ。これからの未来しか頭にないんです。だから1000奪三振とか言われても前のことなんで…。過去の栄光、実績なんて考えたらダメなんですよ」と話していたほどだ。

 そんな藤川にとって今回の奪三振記録を振り返って“感謝”すべき大物がいるという。球界激震の覚醒剤事件を起こし、現在は懸命にリハビリの身でいる、あの清原和博氏だ。「僕にとって清原さんの存在は大きかった。自分を大きく育ててもらったのも、あのひと言が大きかった。一番印象があると今でもそう思っていますよ」

 あの「ひと言」とは2005年4月21日の巨人戦(東京ドーム)でのこと。7回二死満塁で相手は清原。フルカウントから藤川はフォークを投げ、見事、清原から空振り三振を奪ったが、真っすぐ勝負と思い込んだ清原は「ケツの穴が小さい! チ○コ付いてんのか!」と批判を展開した。

 この清原のひと言で藤川の名前は一気に全国区に拡大。当時の岡田監督ら首脳陣も「そっちこそ、キン○マついてんのか!」と応酬するなど、球界でも大論争になったが「あのころはこうやって抑えようとか、ずっと考えたりで楽しかったんです。さらに上にいくためにはどうしようとか」と藤川には勉強になる出来事だった。その年のオフ、清原はヒザの手術を余儀なくされるのだが、藤川は「早く復帰してください」と本人に懇願までしている。それだけ存在が大きかったのだ。

 金本監督からは「俺はほとんど球児の後ろから見てきた。おめでとうですよ」と最敬礼された藤川。清原氏に恩返しするためにもまだまだ頑張る気だ。