【赤坂英一 赤ペン!!】近々「梨田マジック」という言葉がマスコミをにぎわしそうだ。首位・楽天の独走ぶりを見るにつけ、梨田監督の采配の妙にうならないではいられない。私だけではなく、江川卓氏も日本テレビの番組でそう言っている。

 最大のマジックは1番の茂木や岡島らの後ろ、2番に打撃好調の外国人ペゲーロを固定したことだろう。「1、2番に足の速い打者を置けばチャンスが広がりますから」と梨田監督はさも当然のように説明するのだが、これに感心しきりなのが三木谷オーナーである。「梨田監督は去年から何試合か、2番にペゲーロを入れてるんです。2番といえば送りバントですが、多くの打席が回ってくるんだから、どんどん攻撃的にいくべき。そんな思い切った采配が今年はうまくいっている」

 とすると、5位だった昨季から今季をにらみ、梨田監督は着々と布石を打っていたわけだ。監督としての実績を見ても、近鉄では1年目の2000年は最下位で翌01年に優勝、日本ハムでも1年目の08年が3位で09年に優勝。2年目のジンクスならぬ優勝を狙うのが梨田流なのである。

 一見奇抜に見える起用法にも十分な根拠がある。日本ハムを優勝させた09年には一発の少ない小谷野(現オリックス)を4番、投手から外野手に転向した糸井(現阪神)を7番に固定して大成功。当時、その理由をこう話していた。

「あの年は中軸の稲葉、スレッジが左なので、右の小谷野を挟みたかったんです。小谷野には確かに長打はないけど、相手バッテリーが嫌がるいやらしさ、勝負強さがあるから。逆に、糸井は一発があるから、下位でポイントゲッターにしようと思った。最初のうちは、サインをよく間違えるんで困りましたけどね」

 楽天を率いる今季は、チーム関係者の間でも「初めて日本一になった13年の雰囲気が戻ってきた。これも梨田監督のおかげ」という声がもっぱら。東京ドームで主催試合を行った4月25日は、4万5211人の観衆の前で快勝。だが、梨田監督はいかにも自信なさそうにこう言っていた。

「楽天本社のスポンサーや関係者が多くて、大変なプレッシャーでした。手応えなんて感じている余裕はありません。関係者のみなさんにいい試合を見せられてよかった」

 そんなおトボケぶりもまた、「梨田マジック」のひとつと言えようか。