早実が7日の春季高校野球東京大会3回戦の岩倉戦(神宮第二)に9―4で勝利し、ベスト16に駒を進め、夏の西東京大会でのシード権をつかんだ。「3番・一塁」で先発出場した“怪物スラッガー”清宮幸太郎内野手(3年)は5打数2安打。しかし、打撃内容はいまひとつで高校通算80号本塁打はまたもお預けとなった。この試合では相手・岩倉が“清宮挑発作戦”も展開。チームが勝ち進む中、不調にあえぐ怪物には試練の日々となっている。

 この日の清宮は投ゴロ、三飛、右飛、一塁強襲内野安打、左中間二塁打の5打数2安打で、節目の高校通算80号はまたもお預けとなった。打点も0で、二塁打にしても相手の守備に助けられてのもので打撃内容はもうひとつ。清宮も自身の状態について「良くはないと思う。捉えた感覚と違う? そうですね、そういうのばっかです。ポイントのズレが長引いてる。いつもなら打ってるんですが…」と納得できない様子だった。

 そんな怪物を、この日の相手・岩倉は大胆な策で揺さぶった。初回、清宮に打順が回ると中堅手が二塁ベース付近について内野5人、外野は左中間と右中間の2人だけのシフトを敷いた。岩倉の豊田監督は「清宮くんはスピンをかけて打球を上げるイメージ。(狭い神宮)第二(球場)ということで入ってしまう可能性もあったが、上がってくれれば外野2枚でも対応できる」と内野5人の清宮シフトを説明したが、岩倉の作戦はそれだけではない。

 3回からは4番・野村(2年)に対して、清宮とは逆に二塁手が右中間に回り、外野4人、内野は遊撃手が二塁の位置につく3人シフトを展開。この外野4人の野村シフトについても「清宮くんが野村くんを意識してるかはわからないが、そういう(ライバルの)関係にあるのであれば勝手に崩れてくれるかなと思った」と豊田監督。怪物の不振を誘う狙いで、あえて清宮に内野強化、野村に外野強化と対策シフトに差をつけたという。

 清宮はこの“挑発シフト”を「気にしてない。まあ、面白かったですけど。センター前に飛んだらどうするんですかね?」と一笑に付した。だが、思うような結果を残せないのはやはり気になるところだろう。この日、1本塁打、4四球の“相棒”の野村も「ネクスト(バッターズサークル)から見てるとアッパーになってて(バットが)ボールの下に入っちゃってる。あんなに苦しんでるのは見たことがないし、打った後もいつもと顔つきが違う」と先輩の不振に心配を寄せる。

 内角攻めによる死球連発や軟投派左腕、極端なシフト攻勢、外角への徹底したスライダー攻め、変則投げ投手、内角高め攻め、そしてこの日のチーム事情を利用した心理作戦と、あの手この手で各校が清宮崩しにかかっている。それはこの先も続く。最後の夏へ向け、徹底分析で丸裸にされた怪物が真価を問われている。