阪神の生え抜きスター・鳥谷敬内野手(35)の“去就”にチーム内が気をもんでいる。「遊撃一本」でのレギュラー奪回に臨んだプロ14年目のキャンプは初めて実戦での守備出場ゼロで終了。ライバルの若手・北條史也内野手(22)に金本監督が早くも開幕スタメンの座を確約するなど、水をあけられた格好に「三塁や二塁の準備もした方がいい。その方がチームのためにもなる」との声が上がっているのだ。

 2月28日のキャンプ打ち上げで「ここからは実戦でという準備はしっかりできたと思う。ポジションを決めるのは自分じゃないんで。あとは監督が決めるのではないかと」と手応えを口にした鳥谷だったが、目下、遊撃バトルの行方は形勢不利といっていい。金本監督が紅白戦を含む実戦8試合で打率3割5分7厘、2本塁打と結果を出した北條をキャンプMVPの一人に選出した上で「トリが7対3で勝っても(起用は)ないぞ、と言っている。数少ない右打者。使わないわけにはいかない」と断言。まだシーズン開始まで1か月あるというのに早くも開幕ショートの座を事実上確約したからだ。

 鳥谷にとっては不振に泣いた昨年同様のピンチが訪れた格好。チーム内からは心配の声が噴出している。

 ある球団首脳などは「ショートへのこだわりは十分理解できるが、この流れからすると自分から(手薄になっている)三塁、二塁もやるべき。年齢を考えてもチームのためにやってほしい。このまんまではよくない。コーチ陣からも『鳥谷がサードもやります、と言えば監督は使いますよ』という声はよく聞くんだから」というほどだ。

 昨年オフに鳥谷は金本監督に「ショート一本で勝負したい」と直訴。その手前で簡単には…との思いも強いのだろうが、それにしてもこの手の声に何ら屈しない“頑固さ”はどこから来るのか。鳥谷と親しい球団関係者の一人は「まずは北條の守備力には『全く負けていない』と話していること。そして鳥谷は自分が試合に出る出ないでどれだけチームのムードに影響するかを分かっているから。実際、鳥谷派の選手は多いですからね」と不気味に言う。

 金本監督もそういった“内情”を知っているからこそ、鳥谷に三塁転向などを強要するわけにはいかないのだろうが「遊撃・北條」が確定したのなら早く手を打った方がいい。