【伊原春樹氏 鬼の手帳】沖縄・金武町の楽天キャンプ地に到着するやいなや、松井稼頭央とばったり会った。「体はどうだ?」と問いかけると、彼は笑顔で「いやあ、元気ですよ」。フリー打撃でも快音を響かせ、コンディションは上々の様子。今季でプロ24年目を迎える41歳のベテランは相変わらず元気だった。

 それでも昨季は不本意な成績だった。シーズン序盤で極度の打撃不振に陥り、二軍降格も経験。聞けば、その屈辱をバネにオフも体をかなりいじめ抜いたという。西武時代からずっと一緒にやっている専属トレーナーの宮本英治氏とも話し合い、入念に1年間戦える体づくりをしてきたそうだ。なるほど、ユニホームを着ていても彼自慢の“鋼の肉体”がさらに引き締まった印象を受ける。

 今年はスタートから一軍キャンプに同行して若手と同じメニューをこなしている。首脳陣からは当初「抑えめでいい」とベテラン特権を与えられていたが、稼頭央はあえてそれを拒否。今年は自分の原点とも言える猛練習に励みながら復活を期している。そんな彼の姿勢はお手本となって、他の若手たちにも好影響を与えるだろう。

 そして、もう1人。今季大注目の右腕が「伊原さん!」と声をかけてきた。西武からFAで移籍してきた岸孝之だ。「ちょうど、お前さんを探そうと思っていたところだったんだよ」と笑いながら会話を交わしたが、彼の充実し切った表情を見る限り新天地にも溶け込んでいるようだ。

 ケガさえしなければ、楽天でも最低2桁は勝てるはず。それだけではなく、岸の加入によって、釜田や安楽といった若手投手陣にいい相乗効果を生み出すことも考えられる。梨田監督がニコニコしながら私に「いやいや、(岸は)よく来てくれましたよ」と口にしたのもうなずける。

 投打に明るい材料がある楽天。今季は台風の目となりそうな予感がする。 (本紙専属評論家)