【マエケン夫人の告白2】笑顔のアリゾナキャンプ実は…契約直後からピリピリ

2017年01月12日 11時00分

青池氏(左)の取材に笑顔で答える早穂さん(早穂さん提供)

【元局アナ青池奈津子のメジャーオフ通信・特別編:マエケン夫人・早穂さんが明かす「前田家裏日記」(2)】

 

「家族みんなで突き落とされてしまった」

 

 ドジャース前田健太投手(28)の奥様・早穂さんはこう振り返る。2016年1月7日(日本時間8日)にドジャースの本拠地ドジャー・スタジアムで行われた入団会見で英語でスピーチし、笑顔を見せていた前田選手だったが、その心中はとても苦しかったことを早穂さんの言葉で知った。

 

「契約前、本人はルンルンだったと思う。ここ3~4年、ずっと目標にしてきたメジャーで、どんな世界があるのだろう、やっと夢見た世界に行けるって」

 

 ところが、契約直前の身体検査で右ヒジにイレギュラーが見つかってしまう。「『うそでしょ、うそでしょ』って2人ともずっと信じられなかった。だって何年も200イニング投げてきたのにって」。15年は沢村賞を受賞するほどの大活躍。体調管理だってしっかりやったし、体に異常は感じなかった。

 

 だが、ラブコールを送ってきた球団もイレギュラーがあるとの検査結果が出た以上は慎重にならざるを得ない。何度も話し合った結果、年俸300万ドル(約3億5000万円)に抑えられ、出来高に重点を置いた契約が結ばれた(注)。

 

 その日から数か月、前田選手はずっとピリピリした状態が続いたという。「初めて暮らしづらかった。今まで絶対に家の中に嫌な雰囲気を持ち込むことがなかったから…」

 

 1月の契約発表から、キャンプインするまで1か月半。引っ越し等もあり自主トレも不十分。「とにかく初めてだから、絶対パーフェクトな状態に仕上げていかなきゃって自分の中で思っていたみたいですごく焦っていた」。一緒に体をつくり上げていく日本のキャンプに比べて、ある程度自分で状態を上げて参加すると言われるメジャーのキャンプ。「ローテーションに入れるかもわからない状況だったし、しかも契約の時に体がダメとか言われちゃったから、もう今すぐとか明日にでもね、本当にダメになるんじゃないかなっていう不安もあって」

 

 私がキャンプ地のアリゾナで見ていた前田選手は常に笑顔でメニューに取り組んでいた。むしろ大物の雰囲気が出ていたので、正直驚いた。

 

「たぶん、全力だったと思う。本人の中ではそう言ったらかっこ悪いというのもあるだろうし、それで打たれたりしたら恥ずかしいでしょう。でも、家でもすごく対戦相手のビデオとか見ていたし、毎日ノートにいろいろ書いていたりして、自分なりに勉強もしていた。だからそういう時に邪魔しちゃいけないと思って、とにかく早く娘を寝かせて、静かな時間を作ってあげようと、キャンプ中はそれだけを考えていた」

 

 まさに人生の正念場。体に不安がないことを証明したかったし、日米の野球ファンが注目する中で投げる重圧もあった。それらを乗り越えて、前田選手は故障者が続出したドジャースの先発陣の中でただ一人、1年間ローテーションを守り、最終的に16勝を挙げた。

 

 次回はメジャーデビュー戦を少し掘り下げていきたい。

 

(注)…開幕ロースター入りで15万ドル(約1740万円)、15先発達成で100万ドル(約1億1600万円)、20先発で100万ドル、25先発、30先発、32先発でそれぞれ150万ドル(約1億7400万円)、90イニング達成から10イニングごとに25万ドル(約2900万円)。開幕ロースターに入り、32試合に先発して175回2/3を投げ、出来高総額は890万ドル(約10億3200万円)となった。メジャー1年目の年俸総額は1190万ドル(約13億8000万円)。

 

 ☆まえだ・さほ 1985年7月19日、千葉県生まれ。フェリス女学院大時代、テレビ神奈川「みんなが出るテレビ」でリポーターを務める。在学中に「ジュニア・ベジタブル&フルーツマイスター」の資格を習得。2008年4月、東海テレビにアナウンサーとして入社。10年10月末に退社後、フリーに転向。15年2月、初のレシピ本「前田家の食卓」(幻冬舎)出版。