先輩捕手たちの思いは届くのか。巨人・阿部慎之助捕手(37)が今オフ初めて、若手の小林とともにグアム自主トレを決行する。小林誠司(27)を正捕手に叩き上げるためのマンツーマン指導となるが、2人の関係はこれまで決して“良好”だったわけではない。そんな両者を結びつけた背景にあったものは――。

 阿部は12日、東京都内で行われた「ニッポン放送 ショウアップナイターCONFERENCE 2017」にゲスト出演。トークショーでは球団が進める大型補強にも触れ「僕もウカウカしていられない」。日本ハムとの2対2の交換トレードに加え、FA宣言した陽岱鋼の入団も決定的な状況を「『読売ファイターズ』みたい」と表現して爆笑を誘い「この補強があるから、主力がバンバン給料を落とされたのかな」と“阿部節”を炸裂させた。

 そして来年1月の自主トレに小林を同行させることを聞かれ「僕が捕手をできない分、彼が良くなればチームは勝てる。引退するまでにはと思っていたが、今年がいいチャンスだった」と真顔で語った。

 常勝軍団を支え、球界屈指の捕手となった阿部から小林に帝王学が注入されれば、チームにとっても心強い。ただ、これまでチーム内の共通認識としては阿部と小林の間に見えない“壁”があった。実際に、阿部は「小林? 俺のところには聞きに来ない。嫌いなのか怖いのか知らないけど。別に俺に聞いたから良くなるとは限らないけど、聞けば何か変わるかもしれないのにね」と消極的な姿勢に首をかしげ、小林は小林で「僕は阿部さんとは違うタイプ。違った色を出して頑張りたい」といった具合だった。

 そんな2人が“雪解け”に向かった裏には、他の捕手陣のサポートがあった。転機は先月下旬に開かれた捕手会。それまで小林は昨オフと同じく相川らとサイパンで自主トレを行うつもりだったが、その相川や実松らが阿部への弟子入りを後押ししたという。

 シーズン中を振り返れば、相川と実松の先輩捕手が揃って口にしていたのは小林の変化だった。「小林はイニング間に配球をどうしたらいいか、少しでも迷ったら聞きに来るようになった。昨年はなかったこと。小さいことかもしれないが、そこは明らかに変わった」(相川)。小林に一定の成長が見られたからこそ、さらにレベルアップするために相川から阿部への“師匠替え”を認めたようだ。

 グアムへはバリカン持参を厳命している阿部はイベントで「(小林の頭髪を)刈ってきます」と笑い飛ばしたが、後進育成に本気モード。小林は来季、不動の正捕手へと飛躍できるか。