日本ハム・大谷翔平投手(22)が28日、都内で行われた「NPBアワーズ2016」でパ・リーグMVPを初受賞した。4年目の今季は投手で10勝4敗1ホールド、174奪三振、防御率1・86。打者として打率3割2分2厘、22本塁打、67打点とプロ野球史上例のない投打にわたる大活躍でチームを10年ぶりの日本一に導いた。メジャー30球団が大注目する二刀流には、ポスティング移籍が想定されている来オフに向け、早くもMLB各球団の「プレゼン合戦」が過熱しそうな兆候を見せ始めている。

 規格外プレーヤー・大谷にMVPという新たな勲章が加わった。それでも大谷は「(投手としては)序盤からたくさん迷惑もかけましたし、期待した分をちょっと返せなかったと思う。(打者としても)投げられない期間にDHとして出場させてもらいましたけど、それも期待に応えられたのか自問自答している」と反省を口にしながら、来季への思いをこう語った。

「(二刀流を)しんどいと思ったことはない。体力的にもっと伸びる部分はあると思うし、一つひとつのプレーも、もっと良くなるんじゃないかと思っている。自分でも期待している」。さらに「取れるなら(投手タイトルは)全部取りたい。(打者としては)100%DHを任せられている状況ではない。そこを絶対的なものにできれば、もうちょっと違ってくると思う」と貪欲な姿勢を示した。

 その大谷には、すでに多くのメジャー球団が、あの手この手で接触を図っている。本紙既報通り、10日の侍ジャパン強化試合のメキシコ戦(東京ドーム)では、ドジャースのスカウトら3人が堂々と試合前のグラウンド内で大谷と接触するなど、“移籍解禁”が想定される来オフに向けた囲い込みも始まっている。

 2013年12月に合意した入札金の上限が2000万ドル(約22億4000万円)に設定される現行のポスティングシステムの協定期間は3年。改正を希望する場合、契約終了日である10月31日の180日前の5月5日までに相手側に通知する必要があった。今年はNPB側、MLB側の双方とも改正を申し入れなかったため、新たに1年間の延長が決まった。

 来年は大谷の移籍に備えて新たな改正案がMLB側と話し合われる可能性がある。仮に改正されても、現行ルール通り一定額の譲渡金を支払う意思のある球団が全て大谷との交渉テーブルに着くことを想定して、各球団は“来オフ移籍”への調査を進めている。

 だからだろう。一部球団の動きは、これまでの大物日本人移籍にはない方向に調査の幅を広げている。あるナ・リーグ球団関係者は大谷のポスティングの特異性を予想する。

「はっきり言って彼を金額的条件だけで獲得できるとは思わない。おそらく彼が球団を選ぶ中で重要視してくるのは、二刀流を続ける上で最適な環境選びのほうでしょう。仮にシステムが変わっても、現行通り複数球団に交渉のチャンスが与えられるのならば、交渉自体は各球団の“プレゼン合戦”の場になるでしょう」

 すでに大谷獲得に本腰を入れる球団の中には「二刀流を続ける上で最適な現場環境の整備と中4~5日での具体的起用プラン」(前出関係者)を練り始めている。「日本ハムでの起用法とトレーナーによるコンディショニング管理の分析」(ア・リーグ球団スカウト)を進めている球団もあるという。

 中には「日本ハムが彼の獲得時に提出した育成プランに倣って、2ウエー起用の企画書を提案するつもり」の球団もあり、真剣に大谷獲得を狙う球団の二刀流研究は思いのほか進んでいるようだ。もはや二刀流での起用を前提としない球団に勝ち目はないということをメジャー側が認識している。