オリックスからFA宣言した糸井嘉男外野手(35)の獲得に成功した阪神だが、舞台裏はオリックスとの争奪戦というより「不戦勝」に近いものだった。4年総額18億円の条件を提示し、誠意を見せたが、ある球団幹部は「お金どうこうよりも、ウチは糸井選手自身がFA宣言する前の情報収集で『とにかくオリックスを出たい』という強い意志があったことを知っていた。だから交渉の行方そのものは難しいものではなかった」と振り返る。

 巨人など在京球団が糸井に関心を示している水面下情報もあった中、糸井の在阪希望が判明。オリックス残留だけが気になるところだったが、糸井は今シーズン終了後、本拠地・京セラドームのロッカーを空っぽにしてまで整理整頓。阪神サイドは複数のオリックス関係者から「普通、どうするか悩んでいたらまだ荷物は置いているもの。糸井の行く先は阪神さんしかありません」と断言までされていたという。

 阪神の受け入れ態勢も万全だった。金本監督の希望で二軍から平野打撃コーチを昇格させたが、これは事実上、糸井獲りに向けた「シフト人事」と言っていい。「平野はオリックスの選手時代に糸井の面倒や相談に乗ってきた人物。今回もいい動きをしてくれたと聞いている。平野の存在は大きかったと思う」と別の幹部。“密使”の力も虎選択の後押しになったのは間違いない。(金額は推定)