オリックスが国内FA権行使を表明した糸井嘉男外野手(35)の残留交渉を続ける一方で、同じく国内FA権を取得した日本ハム・陽岱鋼外野手(29)の獲得調査も進めている。糸井を引き留めた上に陽岱鋼を加入させる実質“ダブル獲り”計画。同時に糸井の残留に失敗した場合の“リスクマネジメント”でもあるが、この作戦に球団内から心配の声が…。

 3日、オリックスの長村球団本部長は糸井について「ウチは待つだけ。他球団と交渉して、もう1回、となれば改めてテーブルに着くことになる」と話したが、その一方で進めているのが陽岱鋼の調査だ。もしもFA宣言となれば獲得に乗り出す構え。長村本部長も「あらゆる方向で補強は考えている。チームのバランスを考えて調査はしています」としている。

 オリックスの福良監督と陽岱鋼は日本ハムの二軍時代から師弟関係。今季も試合前のグラウンドで話し込む姿が見られ、チーム内では「相当(陽岱鋼は福良監督を)慕っている。単なるあいさつのレベルじゃないからね。宣言したらウチに来てくれるんじゃないか。いとこも獲ったしね」と、もっぱら。オリックスは今年のドラフト育成1位で陽岱鋼のいとこに当たる張奕(ちょう・やく)外野手(22=日経大)を指名。これも獲得交渉での大きな“武器”になるとみられている。

 糸井残留と陽岱鋼獲得が実現すれば、オリックスの外野陣は、さらに強化される。ダブル交渉でのダブル獲りの夢は膨らむばかりだ。だが、この事態に球団内から心配の声が出ている。「糸井が日本ハムをトレードで出された理由として陽岱鋼が育ってきたから、というのがあった。糸井に残ってくれ、という一方でその陽岱鋼を獲りにいくというのは糸井の心証を傷つけることになるんじゃないか」(球団関係者)

 オリックス本社関係者からも「その昔、オリックスで星野伸之(現投手コーチ)がFAした時、残留交渉をしながらロッテの小宮山を獲りにいって、星野がヘソを曲げたことがあった。それくらい選手はデリケートなもの。陽岱鋼の争奪戦に出遅れることになっても、今は糸井の残留一本に絞った方がいい」との意見も出ているほどだ。

 陽岱鋼獲りは糸井の残留に失敗した場合の“リスクマネジメント”でもあるが、どうなるか。さらなる“ハイリスク”を招くことにならなければいいが…。