オリックスが看板流出阻止に大攻勢に出る。糸井嘉男外野手(35)が1日、長村裕之球団本部長(57)に電話して国内FA権を行使すると連絡。これにより11日の交渉解禁後、獲得に乗り出すとみられる阪神との争奪戦がスタートすることになった。すでに糸井に対して4年16億円(推定)の条件を提示しているオリックスだが、阪神の条件を見た上で、さらに上回る金額を用意する方針。一昨年オフに4年20億円(推定)の大型契約を結んだエース・金子を超える“超破格”契約も辞さない構えだ。

 1日の昼ごろに長村球団本部長のケータイが鳴った。糸井からで「手を挙げさせてください。宣言します。夜も眠れないくらい考えて、いろんな人に相談しました。その結果、他球団の話も聞いてみたい」と伝えてきたという。糸井には阪神が興味を示しており、11日のFA交渉解禁後には関西の両球団の間で争奪戦となるのは間違いない。長村本部長は「彼の勝ち取った権利。最終的には残ってくれたらいい。門戸は開けている。他球団の話を先に聞かせて(再度)会えたらいいと思う」と話し、阪神との交渉後に再アタックする考えを示した。

 相手は人気球団の阪神。ここまでの残留交渉でオリックスが糸井に提示した4年16億円を超える金額でくるとみられる。しかも熱血漢の金本監督の直接出馬となれば、オリックスの劣勢は避けられない。球団内では「金本監督の情熱にほだされるかもしれない」「糸井はお父さんが阪神ファンだ。雲行きはヤバイ」と危機感を募らせる声も出ているが、そんな中で、ある本社関係者はこう言い切った。

「もうお金で引き留めるしかないでしょう。糸井はオリックスの顔。金子、中島もいるけど、元気がない。世間的に認知されているのは“オリックスには糸井がいる”ということなんです。看板選手を流出させることは絶対にできない。阪神さんがどれだけ出すかわからないけど、それ以上。金子を超える金額だって出せないことはない。一昨年にもたくさん補強費を使ったじゃないですか」

 一昨年、国内FA権を取得した金子を巡って阪神を含む複数球団との大争奪戦になったが、結果はオリックスが4年20億円もの大型契約で残留を勝ち取った。今回も同じスタンス。総帥・宮内オーナーも糸井引き留めを厳命しており、絶対に負けるわけにはいかない。4年16億円の条件見直しについて長村本部長は「検討してしっかり交渉できればいい」と話しており、今後の阪神の出方次第で金額はそれこそ一気に“金子超え”の4年20億円超もあり得るのだ。

 それほどオリックスにとって糸井の存在は大きい。吉田正、園部、奥浪、杉本ら若手の成長が期待されるとはいえ、チーム内には「3割6厘、53盗塁もする選手なしでどうやって勝つんだ。もちろん、若手に場数を与えることは大切だけど、ウチは12球団でビリ(57勝83敗3分け)なんですよ。目先の勝利を優先しないといけないのはわかっていること」との見方も根強い。長期的な視野でチーム作りをするよりも「まずは低迷脱出が先」で、そのために糸井のバットは必要不可欠というわけだ。

 高知秋季キャンプ中の福良監督も糸井について「(他球団の)話を聞きたいという気持ちもわかる。話を聞いたうえで残ってもらいたい。戦力的に大きいので。フロントに言われたら会いにいく」と話し、直接出馬で引き留める構え。関西2球団による“超人争奪戦”は大マネーゲームに発展する雲行きになってきた。