【日本シリーズ】男気・黒田が引退を決断した真の理由

2016年10月26日 17時15分

大谷(左)を打ち取った直後、黒田は両ヒザに手をついた

 日本シリーズは25日、札幌ドームで第3戦が行われた。今季限りでの現役引退を表明している黒田博樹投手(41)は6回途中、足にアクシデントが発生。緊急降板したが、1失点の力投でファンのまぶたに雄姿を焼き付けた。そんな男気右腕は本紙評論家の前田幸長氏に、引退を決断した真の理由を明かした。

 闘志だけで一度はマウンドに戻った。しかし、右足や腰を気にするそぶりを見せた男気右腕は結局ベンチへ。無念の5回2/3での途中降板。だが、85球、被安打4、1失点の“完全燃焼”だった。

「回の先頭から、両ふくらはぎが張ってきた。今まで感じたことのない感覚だったので、無理をしてチームに迷惑をかけてはよくないと思い自分で判断した」

 11年ぶりの札幌ドームでも、日本一に王手をかける試合でも、もしかしたら野球人生最後のマウンドだとしても、黒田は信条とする「しっかり試合を作ってチームに勝ちがつくチャンスを増やす」投球を貫いた。

 唯一、いつもと違ったことといえば“二刀流”大谷との初対決だろう。「あれだけの能力を持っている。一プレーヤーとして興味がある」と言い切る。だが、続けて「もし対戦することになれば抑えないといけない」と使命感も見せていた。

 初対戦は初回一死一塁の場面だった。初球のツーシームを左翼線に二塁打され、先制点を許すきっかけとなった。2度目の対戦は1点リードの4回。先頭打者の大谷に右中間へうまく合わされ、またも二塁打。だが、ここから本塁を踏ませないのが黒田の真骨頂だ。

 3度目の対戦は6回一死。今度はカウント1―1から落ちる球で平凡な左飛に打ち取った。そして直後に限界が訪れた。

 登板前日の24日、実は本紙評論家の前田氏に引退の理由を独白していた。「やってやれないことはないんですけど、日にちがかかります。中6日で回れるような体ではないんです。登板間隔を空ければ、投げられないことはないと思いますが…。1年間ローテを守れるような投手でなければ、僕の考えに反してしまう」

 前回登板は14日のクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第3戦だった。中10日空ければ相手打者を支配できる。だが、それでは自身の抱く先発投手の理想像とは懸け離れてしまう。

 そして“最終登板”となるかもしれないマウンドに向け、ファンやチームメートにこう語りかけた。「メッセージという大げさなものはないけど…。最後なんで目一杯いきます」。体に違和感を覚えても、すぐにはファイティングポーズを解かない。ピンチを背負っても最少失点に抑える。その姿勢こそ、後輩たちへのメッセージだった。

「日本シリーズのマウンドに立てて幸せ」と振り返った男気右腕。

「最後のマウンドと考える余裕はなかった。次があるなら準備したい。先は見えている。ここまできたら打者1人にでも力になりたい。充実感に浸っている暇はない」とすぐさま臨戦態勢を整えた。

 ロウソクの火は消える前、一瞬大きな炎となる。しかし、引退を決めた男の最後の一閃は目がくらみそうなほど輝いていた。これが最後の雄姿となってしまうのか。それとも…。