レッドソックス時代 上原と世界一 バックアップキャッチャー最後の雄姿

2016年10月26日 10時00分

今季限りでの引退を表明しているロス(ロイター=USA TODAY Sports)
 元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

 

【デービッド・ロス捕手(カブス)】バックアップキャッチャーがチームになくてはならない存在だったら、それはすでにバックアップと呼んではいけないのではないかと思う。それがカブスのデービッド・ロス。お世話になった大好きな、大好きな選手。今年は愛を込めて「グランパ(おじいちゃん)・ロッシー」と呼ばれているが、もうすぐ引退してしまう…。以前マイク・ナポリが「リーダーになるのは、スター選手とは限らない」と言ったが、誰よりも熱く、若く、元気にプレーし、人格者の彼が球界を去るのを惜しむ声は小さくない。

 

「だって39歳だよ。この老体にはもう無理だよ」と冗談めかして(本気かも?)言った後に、真顔になり「家族と一緒にいたいんだ」と少し寂しそうな優しい笑顔を見せる。「今日(8月26日)は一番下の子ハーパーの1歳の誕生日でさ。小さなことだけど、そういう瞬間を見逃すのが、もうつらいんだ」

 

 家族は子供たちの学校の都合上、シーズン中はフロリダ、デービッドは1人でシカゴに滞在している。「上の子2人も9歳と7歳で、父親にそばにいてほしい年頃。僕が家を出て行く瞬間に彼らの心が押し潰されるのを見るのも本当に嫌で。子供たちの面倒を1人で見る妻も助けてあげたい。僕はこの大きな夢の中で生きることができたから、そろそろ彼らの人生の一部になる時なのかなって。時々、体もしんどいしね」。度重なるファウルボールの顔面直撃で脳振とうに悩まされてきたデービッド。その後遺症で一番大事な家族の前で余裕がなくなった時に、引退を考えたのだそうだ。

 

「でもね、今はまだプレーしている。だからこの瞬間瞬間に身を置いて、できる限り楽しもうと思うよ」。この時、きっとまた会おうと約束してから約2か月。カブスはリーグ優勝決定シリーズでロサンゼルスに来た。「疲れた、疲れた」と言いながら誰よりもうれしそうに、ロッカールームでは最後の1人になるまでメディアの質問に答えているデービッドがいた。

 

「初めてのポストシーズンはまだドジャースにいたころ。とても緊張して、真っすぐ立つのも精一杯だった時から考えると、よくここまで来たなって思うよ。僕はどんな試合の前でもいまだに緊張でいっぱい、いっぱい。ポストシーズンはさらにプレッシャーがあるけど、フィールドに出たら落ち着いてくる。何があっても、もう感情にのみ込まれることはない。成長したなって思うよ。そして今、若いやつらがそれを引き継いでどんどん成長している姿を見るのが本当に面白い」

 

 いつだって、時間を割いて真剣に答えてくれたデービッド。「野球は僕の人生。野球は僕なんかにふさわしくないほどの多くのものを与えてくれた。野球が全て。メジャーリーグベースボールに大感謝だし、様々なチームでプレーする機会をもらえたことに大感謝」。ついに始まるワールドシリーズ。デービッド・ロスの最後の戦いをこの目に刻もうと思う。

 

 ☆デービッド・ロス 1977年3月19日生まれ。39歳。ジョージア州ベインブリッジ出身。188センチ、104キロ。右投げ右打ち。高校卒業時の95年のドラフトでドジャースに指名されるが契約せず、大学に進学。98年のドラフトで指名されたドジャースに入団。2002年6月29日にメジャーデビューも、控え捕手として出場機会は限られ、パイレーツ、パドレスと渡り歩く。レッズ時代の06年は正捕手となり、21本塁打をマーク。15年からカブスでプレーしている。