セ・リーグを制した広島とパ・リーグの覇者・日本ハムとの日本シリーズが22日にマツダスタジアムで開幕する。21日には両指揮官による監督会議が開催され、その席上で広島・緒方孝市監督(47)は規則改正を要求。その裏にはシリーズが引退登板となる黒田博樹投手(41)に関する“不安”を排除する目的があった。

 会議で予告先発が議題に上がると赤ヘル指揮官は「ファンの方も注目しているので」と導入を提案。日本ハム・栗山監督も了承した。しかし、予告先発に関する規則についての説明がされたところで緒方監督が“待った”をかけた。

 アグリーメントでは、予告された先発投手がメンバー交換後の登板直前にアクシデントなどが原因で回避となった場合、その日を含めて3日間は投手としての出場が不可能になる取り決めになっている。これについて緒方監督は「何とかできないですか」と異議を唱えたのだ。

 CSファイナルで大谷は指名打者からリリーフに回る“スーパー二刀流”を披露したが、仮に大谷が登板回避となった場合、翌日以降は中継ぎ起用も不可能になり、短期決戦の醍醐味が薄れてしまう。審判らが協議した末に「今回すぐに変えるということはできない」(井野審判技術委員長)と却下されてしまった。

 ファンのことを考えた提案だったが、赤ヘル側にとっては“黒田ルール”という思惑もあった。この日、指揮官は「3戦目に投げる」と男気右腕の登板日を明言。しかし、満身創痍でマウンドに立ち続けているだけにアクシデントが発生しかねない。万が一、黒田が3戦目に登板回避をするとそのまま日本シリーズのマウンドに上がることができずに引退…という最悪のシナリオになってしまう可能性もある。そんな危険性をなくすためのアイデアでもあったのだ。

 残念な結果となったが、もっとも当の本人に迷いは一切ない。「最後のマウンドが日本シリーズというのは幸せなこと。なかなかできることではない。一緒に戦ってきたチームメートに感謝したい」と黒田は決戦への意気込みを口にした。特例はなしとなったが、チームの日本一のため完全燃焼するつもりだ。