【ドラフト1位の素顔:加藤拓也投手(21=慶大)】32年ぶりの日本一を狙うセ・リーグ王者は“外れ・外れ”の末、指名したのは慶大の153キロ右腕だ。求められるのはやはり、黒田の穴を埋める働きだろう。大久保監督は「気迫を前面に出すし、きれいに抑えるというよりも泥くさく“昭和の匂い”を残すタイプ。黒田投手の位置に近づけるようなプレーヤー、ファンにもチームメートにも愛される選手になってもらいたい」と期待を込める。加藤も「(黒田といえば)気迫だったり、闘争心や男気だったり、チームを愛し、チームのために投げることが自分の仕事という感じ。自分がプロに入るにあたっては上を目指さないといけないので、追いつき追い越せでいけたら」と表情を引き締めた。目標とする選手や憧れの選手などは「特にいない」と語ったが、加藤がひそかに尊敬する人物がいる。「小林宏さん」なる人物だ。プロ野球で小林宏といえばオリックスの投手コーチが浮かぶが実はそうではないという。

「僕の中学校のチーム(杉並シニア)の監督で、慶応出身の人です。野球部では盗塁記録も持ってまして。3年間お世話になったというのもありますし、人としても尊敬できる方です」

 小林氏は1978~81年に62盗塁をマーク。これは六大学野球の通算最多盗塁として、いまだに破られていない。プロ入りはしていないが、当時は広島から声がかかったこともあったという。「打者に向かっていく姿勢、ハートが強いと聞いている」と緒方監督も期待する右腕。尊敬する恩師のためにも活躍を誓う。