<赤ペン!!赤坂英一>広島に25年ぶりの優勝マジックを点灯させた立役者は福井優也だった。

 前半戦は2か月も二軍でくすぶっていたが、24日の巨人戦に先発。阿部に先制2ランを打たれ、菅野の打球を右ヒザに直撃されながら、6回まで2失点のみに抑える力投を見せた。ヒザを痛めた直後の打席では、菅野の直球を右中間へはじき返して二塁へ激走、田中の同点二塁打を呼び込んだ。これが逆転勝ちにつながったのだから、文字通り八面六臂の大活躍である。

 巨人の内田打撃コーチは2008~14年、広島の打撃コーチや二軍監督として福井を見ていた。

「昔の福井は、二軍戦で力んで制球を乱すことが多かったよ。フォームもコントロールもバラバラでさ。ところが、今季の福井は二軍でフォームを修正したようで、変化球のコントロールも昔よりよくなってたんだよな」

 ただし、「巨人の打者が福井に気合負けしたわけではない」と言う。

「気迫以前にフォークに幻惑されたんだよ。ああいう落ちる球は、2ストライクと追い込んでから投げるもんだろ。でも、福井はカウント1―0、0―1からでもフォークを使ってくる。あのフォークで3回に小林誠が空振り三振したとき、実は少し嫌な予感がした。案の定、長野も村田もギャレットも、みんなタイミングを外されちゃった」

 つまり、力でも気持ちでも巨人は福井に負けていなかった。うまくかわされただけ、というわけだ。そういう内田コーチの分析を、広島の畝投手コーチにぶつけてみた。

「福井のフォークは昔のほうがよく落ちとったよね。むしろあまり落ちんようになったけえ、巨人のほうが戸惑ったんじゃないかな。投げ方もそんなに変えちゃあおらん。今季は、なかなか前足に体重が乗らんので、そこを修正したぐらいよ」

 福井の右ヒザを直撃した菅野の打球には、こんな効果があったという。

「福井はアレで気合が入ったというより、力みが抜けたんですよ。もともと投げるときに力んで体をねじるクセがあったんじゃけど、軸足が痛いもんやから、ねじらないでスムーズに投げられるようになった。だから、打球がぶつかってからのほうが安定して、いい球がいっとったもんね」

 一見、福井がど根性で巨人打線をねじ伏せたかのように見えた試合も、実際は“けがの功名”でもあったわけだ。福井は次回の登板で真価が問われる。