4位の阪神は23日、クライマックスシリーズ(CS)争いの宿敵、3位DeNAとの直接対決(横浜)に9―3と快勝。ゲーム差を2・5に縮めた。不調の鳥谷、ゴメス2人を揃ってスタメンから外し、原口、中谷ら若手の大活躍で大事なカード初戦を制したが、本紙評論家の伊勢孝夫氏は見落としがちなプレーに着目。あえて苦言を呈した――。

【伊勢孝夫「新IDアナライザー」】重要な初戦で快勝した試合後、金本監督は「今は自分たちの野球を確立する時期。ゲーム差は関係ない」と手綱を締めたそうだが、確かにこの試合、見過ごしてはならないプレーが大量点を呼んだ初回にあった。

 左前打で出塁した先頭の上本を、2番の北條がきっちりと犠打で進められなかった場面だ。1球で決められず、2球目をヒッティングに切り替えて三飛。次の3番・高山が右前打でつないだからこそ、その後の大量得点につながったが、もしも高山が凡退していれば、楽勝ムードの試合にはならなかったはずだ。

 初回に5点取ったからええじゃないか、と済ましてはいけない。今後の阪神を考えれば、なおのことだ。大事な試合だからこそ、あそこはきっちりと送らねばならない。CSに出られるかどうか。もっと重圧のかかる試合はこれから増えていくし、もし、この日の北條のように勝負どころで走者を確実に進められず、重圧に屈するようでは先が思いやられる。首脳陣はしっかりと北條に反省を促し、今後の糧になるように叱咤、助言を送るべきだ。今からでもいい。犠打は練習を繰り返せば必ずうまくなる。

 この試合、阪神は鳥谷とゴメスの主力2人を先発から外して臨んだ。外野からはいろんな賛否の意見を耳にするが、私は金本監督の起用は妥当だと考える。鳥谷については、連続試合フルイニング出場記録が止まった後の代打起用で息を吹き返したかに見えたが、またここに来て調子が落ちている。今の状態ではスタメンで4、5打席を与えられる状態にはない。そしてゴメスはこれまで再三、守備で足を引っ張ってきた。35本塁打ぐらい打っていれば別だが今の本数(20本塁打)なら我慢しても使えるレベルにはない。代わりに若手が奮起すればいい。現状では妥当なオーダーだ。

 若手の今後の成長を考えれば、阪神は何が何でもCS進出を逃すわけにはいかない。重圧のかかるゲームが選手をよりたくましく鍛え、成長速度を上げてくれるからだ。残り26試合に阪神の未来がかかっている。(本紙評論家)