第98回全国高校野球選手権大会の決勝(21日)は作新学院(栃木)が北海(南北海道)を7―1で下し、54年ぶり2度目の優勝を成し遂げた。

 作新学院は1点ビハインドの4回に打線が爆発。打者一巡の猛攻で5点を奪って試合を決めた。

 投げてはエース今井(3年)が7安打1失点の完投。小針崇宏監督(33)は目に涙をためながら「スタートのレベルがそんなに高くないチームでしたけど、よくここまで成長してくれた」と選手をたたえた。

 長渕剛を愛する若き指揮官は、ことある度に涙を見せながらナインにぶつかってきた。ある選手は「春の地区大会に負けたときに、前日の練習に用事があって監督が来れなかったんです。それで『昨日、オレが見ていれば勝たせてやれた。悪かった』と泣きながら謝っていました。そんな姿を見て監督を勝たせたいっていう気持ちが奮い立ちました」と話す。

 夏の県大会を前にメンバー外になる3年一人ひとりに自らの口で涙ながらに説明した。あるベンチ外の選手は「チームで一番、努力してきたのを知っているぞ。でもお前より勝利を優先する、と言われた。今までやってきたことを涙ながらに言われて、もらい泣きしました」と振り返った。指揮官の熱い気持ちは選手にも伝染し「監督が泣いた後にやった選手ミーティングで山ノ井(3年)が『監督を日本一にしよう』って泣いて話しました。それ以降、チームの合言葉になりました」と別の選手は明かす。

 6月の春日部共栄(埼玉)との練習試合にサヨナラエラーで敗戦。小針監督の命で翌日、暗闇の午前3時半にグラウンドに集合し、紅白戦を行った。「まだ暗かったです。死ぬ気でプレーして気持ちが一つになりました。試合が終わって監督から『やればできる』と言われてみんなで号泣しました」。54年ぶりの優勝旗。涙とともに勝ち取った。