第98回全国高校野球選手権大会の決勝(21日)で、北海(南北海道)は作新学院(栃木)に1―7で敗れ、北海道勢として3度目の優勝を逃した。

 ここまで4戦完投してきた先発のエース・大西(3年)の右ヒジは限界だった。「(2戦目の)日南戦でダルいな」と感じたが痛み止めでだましてきた。決勝前は「握力もなかった」という。

 だが、作新打線は手負いの投手を見逃すような甘い相手ではない。4回表、先頭の4番入江(3年)に四球を与えると、3本の長打とエラーで3点献上。大ピンチのまま、2年の多間に初マウンドを譲った。

 多間は、このピンチを何とか2失点でしのぐと、その後も大量失点を許さない好投。大西は「多間は素晴らしい投手になる。北海野球を背負ってほしい」と託す。決勝で自信をつけた次代のエースは「通用した。大西さんみたいにチームを引っ張る立場になって、優勝旗を取る」と頼もしく宣言した。

 準優勝という大躍進は、過酷な環境に負けなかったから達成できた。冬はまともに練習できないが、グラウンドの雪を踏み固め、スキー板で8の字走して足腰を鍛えた。雪が溶けても気を抜けない。ある選手は「グラウンドに巣を作ったカラスが襲ってきて練習中断することもあった。業者に駆除を頼んでもキリがない。球を投げて追い払った」という。

 暑さ対策もぬかりなし。「夏の地方大会前に室内練習場を閉めきって、濡れ雑巾とストーブで気温35度の“サウナ状態”を作って練習した。外は28度だけど、室内から出ると寒く感じて体が痛いくらい」(選手の1人は)。そうやって大舞台でも堂々と戦うことができた。「V6の岡田准一に似ている」などイケメン投手としても騒がれた大西に涙はなく、大学進学を明言すると「本当に楽しい高校野球人生だった」と爽やかな笑顔を見せて甲子園を後にした。