4位の阪神が10日の首位・広島戦(マツダ)を2―1で逃げ切り、連敗を3で止めた。これで3位・DeNAに4ゲーム差。本紙評論家の伊勢孝夫氏が虎のクライマックスシリーズ進出に向けて対策を指南した。

【伊勢孝夫「新IDアナライザー」】試合後、金本監督が「投手陣がギリギリのところで踏ん張ってくれた」と話したように、この日は能見の好投から継投策で広島打線を抑え、勝利を収めた。3位浮上に向けて大きな1勝だが、気掛かりなのは6勝14敗という広島との対戦成績だ。力や勢いに差があるとはいえ、ここまで貯金を与えてしまうのはやはり苦手意識があるといわざるを得ない。これではいけない。

 特に新井を何とかしなければならない。阪神戦の打率は3割2分1厘でその内容は阪神時代とは別人。打席の中でタメが作れているので逆方向に打つことができ、対応する力は格段に上がっている。何より一昨年まで阪神に在籍していた新井に打たれることは他の選手にやられる以上にダメージが大きい。

 私が近鉄でコーチをしていた1996年、前年にトレードでオリックスに移籍した大島公一によく打たれて4位に沈んだという苦い経験がある。周囲からは「出したあいつに打たれて…」と厳しいことを言われた。元同僚の選手にやられていいことはない。ペナントレースで広島との対戦は残り5試合とはいえクライマックスシリーズで再戦の可能性もある。いま一度、新井を分析し直し、徹底的に封じなければならない。それが広島への苦手意識を払拭する手立てになる。

 3位・DeNAとは4ゲーム差。ここから3位を目指す上で金本監督に忠告したいのは、焦りは禁物ということだ。96年の日本ハムは当時の上田監督が、あまりにも早くから投手陣のフル回転起用などスパートを掛けてしまったあまり、最後に失速。オリックスに逆転Vを食らってしまった。優勝争いと3位争いの違いはあっても、ムチを入れるのは残り20試合を切ってからがベスト。それよりも前に金本監督ら首脳陣が96年の上田監督のように焦ると高山、北條ら経験のない若手は過度の重圧を感じるだろうし、プラスはない。

 今の阪神は最下位だったころとは見違えるほど良くなっている。Aクラス入りは十分見えている。残りの36試合を金本監督がどう戦うか、注目していきたい。(本紙評論家)