第98回全国高校野球選手権大会第3日(9日)の第3試合で優勝候補の横浜(神奈川)が東北(宮城)に7―1と快勝し、2回戦に駒を進めた。プロ注目のエース・藤平(3年)が6回2/3を6安打1失点、13奪三振の好投。打線も先発全員安打の15安打で名門の風格を漂わせたが、その実態は“王者”ならぬ“王子様”軍団だった――。

 圧巻の投球だった。藤平は初回、三者連続三振で課題だった立ち上がりを克服すると、毎回の13奪三振で東北打線を圧倒した。「今日はどんどんストレートで押していこうと思った。一個一個の三振は狙って取りにいったけど、合計の数はあまり意識していない」。神奈川大会で自信を深めたフォークをこの日は封印。スライダーも極力控え、力で相手を抑えた。

 そんな藤平をはじめ、横浜のロッカーには常に「いい香り」が漂っている。先制適時打を放った村田(3年)、3安打の増田(2年)ら多くの選手がブルガリなどの香水を好んで使っているからだ。「ロッカーとかバスの中とか汗の臭いが嫌なんです」(ある選手)。平田監督やコーチ陣も愛用しているそうだ。

 なにしろ、ナインの合言葉は「かっこよくやろうぜ」。香りだけでなく、服装にも気を使っており「安い服をシンプルに着こなすのが好き」と藤平は言う。ナインは暑くてもまだらに日焼けしないように心掛け、休日にはアクセサリーなどのショッピングに出掛ける。今大会のためにユニホームも新調。全員がオーダーメードで採寸した新ユニホームで聖地に乗り込んできている。

 移動中のバスでは女性ファンから黄色い歓声が飛び、ナインは手を振って応える。「ウチは男子校。だからというわけじゃないですが、身だしなみには気を使うし、女の子がいるとみんなでチヤホヤするんです。乙女ゲームのキャラみたいな振る舞いを心掛けてます(笑い)。僕らが勝ち進んで“野球はかっこいい”というイメージを広めたい」(ある選手)

 次戦は第8日第4試合でプロ注目左腕・寺島擁する履正社(大阪)と激突。藤平は「寺島と投げ合う機会がこんなに早く来ると思わなかった。(寺島が)一番いいピッチャーだと思っている。早い段階で勝負したいという気持ちはあった」と気合十分。“王子様軍団”が西の横綱をはじき飛ばす。