巨人が男の一撃で竜を一蹴だ。3日の中日戦(ナゴヤドーム)も投打に相手を圧倒し、5―0の快勝で5連勝。首位広島との差を7に縮めた。投げては先発の田口麗斗(20)がプロ初完封を飾れば、打のヒーローは5回に特大の13号3ランを放ち、試合を決めた村田修一内野手(35)。冷ややかな周囲を黙らせる活躍で存在感を示し続ける背番号25に、高橋由伸監督(41)の見る目も大きく変わってきている。

 2点リードの5回一死二、三塁。ガキーンというすさまじい衝撃音を残し、村田が放ったライナー性の打球は、広いナゴヤドームのバックスクリーン左へ突き刺さった。

 打った本人でさえ、思わず「すごかったですね」と驚いた一発。「角度が低くて本塁打になるとは思わなかったので、激走してしまいました」と笑ったが、この一発で中日は完全に戦意喪失。後は田口がサラッと寄り切るだけだった。

 普段クールな由伸監督も、理想的な試合運びに表情が緩む。「今日は言うことないですし、いい意味で、何もないんじゃないですか。打つ方も、投げる方も、特に僕がしゃべることはないんじゃないですか」と笑みを浮かべて切り出すと、殊勲の村田については「ずっと今年はいい状態が続いていますね」とプレーぶりを高く評価した。

 今季は開幕から打棒好調の村田だが、後半戦はさらにギアを上げている。5番に昇格した先月24日のDeNA戦以降、8試合で31打数13安打、その間の打率は4割1分9厘。球団内で「少なすぎる」と批判されていた打点も、いつの間にかチーム3位の41まで伸ばしてきた。

 開幕前の村田は、四面楚歌と言っていい立場だった。球団も親会社も、今季は2年目の岡本の台頭を期待。由伸監督が挙げたキーマンの中にも、名前はなかった。三塁のレギュラーの座は風前のともしび。それでも岡本がオープン戦で結果を残せず脱落すると、その後は「若手に付け入る隙、チャンスを与えたくないんです」と故障を押しながら打ち続け、意地でホットコーナーを守ってきた。

 当初は7番に固定されていた打順が一つずつ上がってきたのは、指揮官の信頼の証し。「監督も村田がここまでやるとは正直、思っていなかったはずです。実際、開幕してからも岡本を三塁で使う気満々でしたから。それが徐々に変化してきた。結果も文句ないし、ケガをしても黙って出続ける姿を見て、監督なりに感じるところがあったようです」(チームスタッフ)

 3年契約最終年の村田に対しては、今も親会社、球団ともに厳しい構えを崩していない。はっきりと「使わなくていい」と口にし、オフは減俸どころか、放出まで迫る幹部もいたという。ただ由伸監督が再評価していることで、今後は背広組の見方が変わる可能性もある。

 試合後は自信に満ちた表情で「状態的に上がってきているし、広島へ行っても頑張ります」と意気込んだ村田。奇跡の逆転Vへ突っ走るチームの中で、背番号25の存在感は日増しに大きくなっている。