上原浩治「中継ぎピッチャーズバイブル」

 セットアッパーとしてメジャー8年目をスタートしたレッドソックスの上原浩治投手(41)は守護神キンブレルの負傷により、8日(日本時間9日)からクローザーとして4試合に登板して4セーブをマークした。ところが、右胸筋を痛めて20日(同21日)、15日間の故障者リスト(DL)に入った。復帰は早くても9月になりそうだ。その上原は今季、39試合の登板で2勝3敗6S。防御率4・50、与四球率2・25はともに過去8シーズンで最悪の成績だ。ベテランがセットアッパーの難しさを語る。

 今季はチーム方針により、試合を締めるクローザーから8回を投げるセットアッパーに配置転換されて開幕を迎えた。「前にもやっていたし、やることは変わらない」と話すが、自分に言い聞かせている部分が大半を占めているように思う。なぜなら8回と9回では準備、試合への入り方、気持ちのコントロール、ゲームプランなど多くの部分で違うからだ。

 上原がクローザーを務めている時「3点差なら(失点は)2点まで、2点差なら(失点は)1点までオッケー」などと話すことがあったが、今年は違った。7回、8回の失点は試合の潮目を変える恐れがあるため、無失点で次の投手にリレーしたいと考えるからだ。加えて今季のファレル監督は「打線が良いので(リードされていても)点差をキープしておけば勝機が訪れる可能性がある」という理由で、リードされた展開でも上原、田沢純一投手を起用することが多い。こうなると当然、1点もやれないという心境になる。

「与えられたところで結果を出すのがプロ。今は(結果を)残していないということ。過程なんて誰も評価してくれないわけやからね。結果が全てですよ」と話していた。

 地元メディアなどでは年齢による衰えを指摘する声も出た。最も深刻なのは伝家の宝刀スプリットが不安定なこと。被本塁打8本の内訳はスプリットが6本、ストレートは2本だ。打たれたスプリットは落ちずに甘く入り、引っ張られてスタンドに運ばれたものが多い。また、2ラン5本、ソロ3本という内訳からも分かるように、セットポジションがひとつの課題となっている。もちろん、スプリットを狙い打ちされたケースもある。上原がいかにスプリットで打者を翻弄してきたかということの表れだ。

「スプリットが今は良くないからね。でも、いい時もあれば悪い時もある。こういうのは毎年ありますし、仕方ない。相手が仕留めることもあれば打ち損じることもある」と上原。スプリットが落ちない要因については「それが分かれば苦労せえへん。今は自分の実力がないだけ」。

 日々のキャッチボールではストレートとスプリットの腕の振り、角度、球の軌道が同じになるよう地道な練習を繰り返す。スプリットが安定していてもこの“確認作業”は続けているだろう。一方、ストレート、カット系のボールを磨き、維持する練習も怠らない。

 そんな苦しい中、過去8シーズンで最高の数字をマークしているのが奪三振率だ。今季は今のところ12・75。1イニング当たり1・42。つまり、アウトの約50%を三振で奪っていることになる。スプリットだけではなく、ストレートで奪うケースも多い。

 ストレートに関しては、今年はキャンプ中から手応えを感じていた。「何かを変えたわけではないんですけど、真っすぐあっての変化球なのでね。だから、もう一度真っすぐをということで取り組んできた」というオフの自主トレが2~3月のキャンプを経て、4月に開幕した公式戦で実りを見せた。

「真っすぐに関して言えば、空振りではなくても、フライアウトでいい。スプリットに関しては、左打者にひっかけさせて二ゴロとかね、そういうのが理想的なので。もちろん、空振りが取れるに越したことはないですけどね」

 今季はスプリットの影響もあるが、ストレート中心の配球も見られる。だが、全球外角ストレート勝負で臨んだとしても、高さを変える絶妙なコントロールで打者を惑わせる技術は健在。それでも上原は危機感を募らせている。

「1年間無事に終われたらいいが、この年齢で成績が悪かったらもうね、クビですから。失敗すればクビだなっていうのは覚悟している」

 それに加えて右胸筋を痛めて戦線離脱。クローザーとして4戦連続セーブと結果を出していただけに無念に違いない。レッドソックスとは契約最終年。巨人時代から何度も肉離れを経験し、オリオールズ時代にも右ヒジの腱を痛めるなどこれまでも直面したピンチは全て克服してきた。しかし、年齢から考えると今回は一番厳しい状況と言えるだろう。それでも乗り越えることはできるはずだ。

「9月(復帰)をめどに頑張ります」と語った上原。チーム、ファンは背番号19が万全の状態で復帰する日を待っている。