第98回全国高校野球選手権大会の岡山大会決勝で前代未聞の珍事が起きた。1―0で創志学園を下して3年ぶり4度目の夏の甲子園出場を決めたはずの玉野光南が、審判の判定が覆ったことにより、土壇場でうっちゃられてしまったのだ。
筋書きのないドラマが展開されたのは、玉野光南の1点リードで迎えた9回表だった。一死一塁で難波侑平(2年)の放った打球は力なく投前に転がり、1―6―3の併殺が成立。三塁側ベンチから玉野光南ナインが一斉に飛び出し、マウンド付近で歓喜の輪を作って勝利を確かめ合うと、段取りどおりに整列した。
しかし、待てど暮らせど創志学園ベンチから選手たちが出てこない。最後の打者となった難波が自打球をアピールし、ファウルだと主張したからだ。審判団は協議した後に整列したが、再びバックネット裏の本部席付近に集まり、山河毅審判委員長を交えて協議に入った。
中断すること約7分。整列したままの玉野光南ナインに笑顔はない。協議を終えた審判団を代表して責任審判の浮田一塁塁審がマイクを握る。
「打球がいったん地面についたあと、フェアグラウンドについたあと、バッターに当たっとる。ワンバウンドした打球がバッターの足に当たっとるということになりましたので、ファウルボールとして試合を再開します」
リアクションは対照的だった。九死に一生を得た創志学園ナインは「ヨッシャー」と雄たけびを上げ、甲子園行きの切符を無効にされた玉野光南ナインは引きつった笑顔。その勢いの差は再開された試合にも反映され、打ち直しとなった難波の右前打を皮切りに一挙4点を奪って試合をひっくり返し、4―1で夏の甲子園初出場を決めた。
野川悟主将(3年)は「自分たちらしくつなぐ意識で我慢強く戦えた」と言い、プロ注目のエース・高田萌生(3年)は「甲子園で相手を圧倒する投球をしたい」と自信を見せたが…。柔道のジュリー制度を思わせる審判団のドタバタぶりで天国から地獄に叩き落とされた玉野光南ナインには、なんとも酷な試合となった。
【高校野球】岡山大会決勝 玉野光南ナイン覆った判定で天国から地獄
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