最下位に低迷する阪神に浮上の手立てはあるのか。「超変革」のスローガンの下、若手選手の積極起用などで開幕直後こそ勢いのあった金本阪神は、その後、主力選手の不振や若虎の経験不足が露呈。そんな悩めるチームを金本知憲監督(48)の恩師である本紙専属評論家の大下剛史氏が徹底分析した。

【大下剛史 熱血球論】阪神のつまずきの始まりは助っ人補強だった。昨年3AでMVPに輝いたヘイグを獲得したが、これが誤算。私もキャンプでヘイグの線の細さを見たとき「これで大丈夫だろうか」と気になったが、やはり打線強化には至っていない。不振の鳥谷をスタメンから外すなどしているが、得点力不足に悩まされている状態。同じ三塁手で中日を退団したルナを獲得し、機能させている広島と比較すると、補強の差が出てしまった。

 ゴメスも安定感に欠ける選手だけに、新監督に対する補強として物足りなかったのかもしれない。ただ、勝負事の世界で同情することはできない。助っ人がダメならば、それに頼らないチーム作りをすればいい。そこで金本監督に提案したいのは“鬼”になれということだ。

「超変革」の名の下、若い選手が積極的に登用されている。ところが、阪神の若手の打球は、広島の選手のそれよりも明らかに力がなく、ひ弱さを感じる。これはキャンプでの振り込みの量の差によるものだ。広島のキャンプは打撃ケージを3つにし、ティー打撃も4か所以上で行うなど、選手が息をつく暇のない状態だった。石井打撃コーチは「これだけやれば、大下さんも何も言えないでしょう」と言っていたが、確かに12球団一の練習量を誇っていた。それに比べれば阪神は到底及ばないだろう。

 しかし、今からでも遅くはない。シーズン後半戦、そして来年に向けて早急に手を打つべきだ。振り返れば、駆け出しのころの選手・金本は、シーズン中でもヘトヘトになるくらいに練習をやらされ、極限の状態の中で試合に出場し、結果を出した。遠征先でも場所を確保し、バットを振らせていたものだ。猛練習が伝統のカープの中でも金本監督ほど練習した選手はいない。それほどの鍛錬によって肉体的、精神的に“鉄人”になっていった。

 厳しい練習のつらさを知っているからこそ、指揮官という立場になった今、若い選手に「自分と同じようなつらい経験をさせずに伸ばしてあげたい」という親心を持っているのかもしれない。ただ、それでは猛虎復活を果たすことはできない。現在も一部の若手には休日返上で練習を課しているようだが、ヘドが出るくらい、手から血が出るくらいやらせるべき。血と涙があってこそ、鉄人・金本のような強い選手が生まれる。

 就任1年目とあって遠慮もあったかもしれないが、ここまでチームが低迷すれば、やりやすいだろう。昔からどんな逆境でも泣き言を言わず、責任を全うする男だけに、今後の動向に注目していきたい。(本紙専属評論家)