全国高校野球選手権神奈川大会3日目は12日、各球場で行われた。その中で、サーティーフォー保土ケ谷球場は、ある「パフォーマンス」が見られることで高校野球ファンの間では有名だ。

 横浜隼人高校野球部の1、2年生部員が補助員としてグラウンド整備を担当している。腰を低く下ろし、四股踏みのときのような体勢で一斉にトンボをかけていく。そのときの「太ももと地面との角度は90度」というルールが決まっているそうだ。その姿がネットなどでは甲子園球場のグラウンド整備を担う「阪神園芸」になぞらえて“隼人園芸”と呼ばれている。

 元巨人監督の原辰徳氏(57)が高校生のころから神奈川大会を見続けているという男性は「10年くらいか、もっと前からやってるね。隼人の子らは元気があっていいね。応援したくなるよ」と“隼人園芸”のファンも多い。

 横浜隼人高校では、入部するとすぐに野球部のルールとともにトンボがけの極意を学び、サブグラウンドで練習を行う。その時、コーチや指導係の上級生の目が光るほどの徹底ぶりだ。これができないと練習に参加させてもらえないというほどトンボがけに重きを置いている。しかも一人1本“マイトンボ”を購入して3年間ともにするほどだ。

 なぜそこまでするのだろうか。「うちは寮がないので練習時間を1分1秒無駄にしないためだと教わっています。トンボがけも練習の一つなんです」と、入部して3か月の1年生部員は話す。

 恥ずかしくないかと問うと「正直、恥ずかしい。でも、グラウンド整備だけで観客から拍手をもらえるなんてうれしい。今は、伝統をなくしてはいけないという気持ちに変わってきた」と徐々に隼人イズムを理解している様子だ。

“極意習得済み”の2年生部員は「パフォーマンスというより練習としてやっています」と当たり前のように話す。しかし、「以前は変わり者呼ばわりされることもあって悔しかったんですが、ネットなどで取り上げられ、今は誇りを持っています」と胸を張る。

 さらに、沖縄に遠征に行ったときに相手校がマネをしていたそうで「こんなところまで知れ渡っているんだと思ってうれしかった」と笑みを見せた。そして「大学でも野球を続けて、この“隼人園芸”を広められたら」と冗談っぽく話した。

 数年後には、この「トンボがけ」が野球界のスタンダードになっているかもしれない。