早実の怪物スラッガー・清宮幸太郎内野手(2年)が10日、八王子市のダイワハウススタジアム八王子で行われた西東京大会2回戦の啓明学園戦で今夏の初戦に臨んだ。「3番・一塁」で先発出場し、高校通算51号となる本塁打1本と2四球の活躍で11―1の5回コールドゲーム勝ちに貢献。2年連続夏の甲子園出場に向け、清宮はひそかに“虎の穴”を主宰してナインに打者としての極意を伝授していた。
わずか1スイングで勝利を呼び寄せた。3回の第2打席、1球目を見送り、2球目のカーブを怪物のバットが捉えた。「先頭で気楽に(打席に)入れた。カーブを狙っていてうまくさばけたけど、入ったとは全然思わなかった。フェンスにも届いたかなという感じ」と振り返るライナー性の当たりが右翼ポール際席まで一直線。主役の一発が呼び水となり、早実はこの回打者一巡、5安打9得点の猛攻で啓明学園を圧倒した。
初回の第1打席は一度もバットを振ることなく四球で出塁。3回、2巡目の第3打席でもストレートの四球を選び、この日唯一のスイングはソロ本塁打となった第2打席の2球目のみ。“動かざること山のごとし”とばかりに相手バッテリーを威圧し、たった一振りで試合を決めた。「言われてみればそうですね。あまり意識はしてなかったんですが…」と人ごとのように語る清宮はまるで一撃必殺のヒットマンのようだが、その眼力は今や他のナインにまで波及している。
この日チーム全体で手にした四球は8。うちストレートの四球が5つを占める。もちろん相手投手の制球が定まらなかったことも一因だが、これだけ四球を稼いだ裏には“清宮道場”の存在がある。
初回2点目となる押し出し四球を見極めた岡本大輔外野手(3年)は「きわどいコースもあったけど、自信を持って見送った。清宮が(選球眼が)いいので『どうやって見てんの?』って聞いてるんです。チームの1点につながったのは、自分の中では大きい」。この日、公式戦初本塁打を放った1年生4番の野村大樹内野手も「自分は選球眼が悪かった。『意外とボール球が多いからよく見とけ』と清宮さんに教わってから、率が上がった」とその効果を実感する。
当の清宮は第1打席、ストライクを四球と勘違いして歩きだす一幕もあったが、ご愛嬌。2日の開会式で「(清宮は)第2のキャプテンみたいな感じ。清宮の発言を参考に、僕がチームにそれを促すこともある」と話した主将の金子銀佑内野手(3年)も、岡本によると最近は「選球眼」がもっぱらの口癖という。
早実は清宮が1年だった昨夏の甲子園で4強入りしたが、今年のチームは昨秋も今春も都大会2回戦敗退。勝負弱い印象だったが、清宮が講師役となった“眼力道場”で四球に対する意識がチーム全体で高まり、チーム力は今春から確実にアップしている。
清宮の一発という派手な打撃に目がいきがちな早実だが、この日の勝利の裏には四球による地道な出塁が光った。これも清宮効果だ。
「一つひとつ勝っていければ。甲子園に行くというか、全部勝つという気持ち。全部勝てば、必然的に甲子園に行けるので」と清宮。
主砲を担うだけでなく、チーム力まで底上げして2年連続の聖地に乗り込めるか。
51号!清宮効果で早実コールド発進 ナインに選球眼の極意を伝授
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