<前田幸長 直球勝負>巨人が10日のDeNA戦(東京ドーム)を10―7で制し、およそ1か月ぶりの3連勝。これで首位・広島と10ゲーム差を残し、12日から前半戦最後の直接対決(マツダ)に臨むことになった。とはいえ、リーグ優勝するにはメークドラマ、メークレジェンド級の大逆転劇しかない今、指揮官は何を思うのか。本紙評論家の前田幸長氏が、巨人・高橋由伸監督(41)を直撃した。

 クールな男がのぞかせた切実な“願い”のように感じた。前半戦を2試合残しての10ゲーム差は、もはや自力だけではなく他力の助けがないと優勝は厳しい。しかし、常勝を義務づけられた指揮官としては、ひたすら前を向くしかない。この現状に由伸監督も「このまま(広島の好調が)続くことはないと思う。調子の波は来るだろうし…。とにかく、カープが負けて、うちが勝たないと。単純にカープが負けてくれないことにはね」と言い聞かせるように語った。

 指揮官として打つべき手は打っている。坂本、長野、阿部、村田…再起を期待された主力をどっしり据えた。足並みこそ揃わなかったが、しかるべき結果を出し始めている。とはいえ、シーズンを乗り越えるためには、こうした主力に若手の力が必要不可欠だ。その辺は監督も同じ意見だった。「勝つために必要なことはベテラン、中堅も含め、若い力が絡まないと。しかし、(若手に)チャンスをあげているのに、中堅とベテランしか名前が出ない。勇人だったり内海だったり慎之助だったり…。若手がガツガツやっていかないとチーム力は上がってこない」

 大田、中井、ルーキーの重信や山本。1、2番にこうした若手を配して奮起を促しているが、必死さに欠け、結果が出ないことに歯がゆさを感じているようだった。

 由伸監督も、ただ求めているだけではない。自身の現役時代を振り返り、やや語気を強めてこう続けた。「僕は試合に出て結果を出してレギュラーをつかんだんです。“与えられたレギュラー”じゃないんですよ」。黄金ルーキーという重圧の中、大物揃いだった当時の巨人主力陣に実力と結果で割って入り、開幕スタメンをつかみ取った。それだけに、今の若手の姿に物足りなさを感じているのだろう。

 投手陣に関しては、ようやく揃ってきた先発投手の“奮起、挽回”に尽きる。菅野はもちろんのこと、マイコラス、テツ(内海)、大竹寛、なんとか先発ローテで踏ん張っている田口。特にマイコラスは昨年のような内容を見せてくれることが大前提だ。由伸監督も、この点を大きなポイントとして考えていた。

 最後にチームが連勝を重ねる上での“条件”も語ってくれた。「連勝するというのは、劇的な勝ち方が結構絡んでくる。そういうときに大きな連勝ができるんですよね。いつもピッチャーが抑え、バッターが打つだけじゃないんです」。相手の一つのミスに乗じた大量得点、ラッキーボーイといわれる選手の出現、逆転サヨナラ勝利など、チームに勢いを与える白星も反攻のポイントになるということだろう。

 10日の試合後、由伸監督は「今年に入って初めて打線が(投手陣を)カバーできた」と語ったそうだ。それが前述の条件に入るかどうかは分からないが、今後巨人ナインがどういう戦いぶりを見せてくれるのか注目したいと思う。 (本紙評論家)