「失敗ドラフト」だなんて言っていたのは誰だ。セ首位の広島が鈴木誠也(21)、下水流昂(28)の同期コンビの活躍で5日の中日戦(富山)に4―1で快勝。貯金を今季最多の17とし、2位DeNAに10・5ゲーム差をつけた。2人が指名された2012年のドラフトでは、1位で2度の競合に敗れた影響から野手5人を獲得。バランスの悪いチーム編成にはファンからも批判の声が上がっていたが、そのうちの2人が“神扱い”されているのだから分からない。

 1―1の7回に均衡を破ったのが、このところ“神ってる”鈴木だ。無死一、二塁から「前の打者がつないでくれたので何とかしたかった。『併殺でもいい』という気持ちで打席に入った。今まで打席でがっついていたけど、我慢しようという意識が形になってきた」と左前へ。二塁からルナが生還して勝ち越し。さらに次打者の下水流が2点二塁打で続いて勝利を決定づけた。

 相手先発の大野とは今季初対決だった。昨季は2試合の対戦で0勝1敗ながら20回2/3を2点に抑え込まれている。4年目の同期コンビのバットで苦手左腕に黒星をつけ、緒方監督も「今日の勝利は大きい。(大野は)後半戦2回、3回と当たる投手だから」と興奮気味に話した。

 売り出し中の2人の入団は“偶然の産物”でもあった。2012年のドラフトでは広島は1位で東福岡高の左腕・森雄大を指名するも、楽天との競合の末に敗戦。“外れ1位”でもNTT西日本の増田達至が西武とバッティング。くじ引きで2連敗するとドラフトの方針を大転換し、2位の鈴木、4位の下水流を含めて育成を除く5人の指名をすべて野手で固めた。

 当時は2回連続でくじ引きに敗れた悔しさもあり、ファンからも「失敗ドラフト」だとやゆされた。球団幹部も「当然1位が投手で2位が野手のほうがバランスが良かった」と振り返るほどで、相思相愛と思われていた森を競合覚悟で楽天が指名してきたことにも「(前年のドラフトで)野村を一本釣りされたことに、もしかしたら星野さん(仙一氏、当時楽天監督)はカチンときてたのかもしれない。岡山出身で明大卒の直の後輩だから。そこで、翌年の横ヤリだったのかな」(同)と話す。

 しかし、結果は吉と出た。前出の幹部は「鈴木は他球団もマークしているとの情報が入り、急きょ2位に繰り上げた。下水流は(同じホンダ出身で現巨人の)『小さな長野』というふれ込み。当時は脚の故障があり評価を下げていたので、あの順位で取れたのはラッキーだった」と胸を張る。

 5年目の野村は両リーグ単独トップの10勝目をマークし、成長著しい左腕の戸田、中村恭をはじめ、ルーキーの岡田、中継ぎの今村、守護神の中崎と投手陣を支えているのは生え抜きの20代。大胆な野手5人指名も、今となっては大正解だったといえそうだ。