【新IDアナライザー・伊勢孝夫】オリックスは20日の阪神戦(甲子園)に0―2で敗れて4連敗。交流戦はパ・リーグの6球団で唯一負け越し、5勝13敗の単独最下位でフィニッシュとなった。ここまで65試合を消化して借金は今季ワーストの17、パ首位のソフトバンクとは22ゲーム差と苦しんでいる。そんな12球団で最も優勝から遠いポジションにいるオリックスに本紙評論家の伊勢孝夫氏は「今のメンバーで目先の1勝にこだわるのはナンセンス」とバッサリ。その上で福良バファローズの目指すべき野球の“道しるべ”を示した。

 阪神に完封負けを喫した後、福良監督はリーグ戦再開に向けて「打つ方が課題かな。先発は安定してきたし、後ろも見えてきた。とにかく打つ方に何とかしてもらいたい」と、リーグワースト打率2割4分3厘の打線に奮起を促したと聞いた。

 はっきりと言わせてもらう。現場もフロントも現実を受け止めるべきだ。オリックスの現有戦力でソフトバンクやロッテといった好調なライバルと渡り合うのは至難である。プロ野球を戦っている以上、勝利を目指すのは当然だ。だが「未来」を見据えた戦いを忘れてはならない。今のオリックスはあまりに目先の1勝にこだわりすぎているように思う。143試合を戦い終えた後、勝てなかった、人も育たなかったとなれば何も残らない。

 オリックスのここまでの戦いを見ていて看過できないことがある。それは首脳陣の若手選手への教育不足。この日、0―0で迎えた8回、先頭の1番・西野はカウント3―1から藤川の高めのつり球を打って右飛に倒れた。見逃せばボールで四球。無死から出塁することができた。終盤で試合は1点勝負。あそこで打ちにいった西野を見て教育が足りないと思わざるを得なかった。

 福良監督には選手の力量を見抜く「眼力」は十分に備わっていると思う。だから彼には人を育ててもらいたい。阪神、楽天でチームを優勝させたのは星野仙一監督だ。だが、その下地を作ったのは野村克也監督だ。私は福良監督に言いたい。「本当に感謝される仕事、価値のある仕事に尽力せよ」と。現在、セ・リーグ首位を快走する広島は緒方監督が昨季、我慢して起用した田中ら若手選手が今季、戦力となっている。来季以降のオリックスにはそれと同じ道を歩んでもらいたい。

 オリックスの宮内オーナーは本当に野球が好きな方だ。自前で育てた選手が躍動し、栄冠をつかむ姿を目にした時、心から喜ばれるだろう。人を残す仕事は極めて尊い。育成は我慢が必要でファンも含めた周囲の理解も必要だが、福良監督の腹をくくったチーム作りに期待したい。

 (本紙評論家)