広島が14日の西武戦(マツダ)で史上初となる“コリジョン・サヨナラ”の劇的勝利を収めた。

 2―2の同点に追いつかれた9回二死一、二塁で打席には途中出場の赤松真人外野手(33)。この試合初打席だったが、増田の初球スライダーを中前にはじき返した。二塁走者の菊池は本塁へ突っ込むが、本塁タッチアウトの判定。だが、捕手の上本の足が走路をふさいでいるようにも見え、緒方監督が抗議してビデオ判定に持ち込まれた。

 判定は長時間に及んだが、杉永責任審判が「コリジョンルールを適用しセーフといたします」と告げた瞬間、球場は今季一番とも思える大歓声となった。

 そんな劇的勝利の陰の立役者は河田雄祐外野守備走塁コーチ(48)だ。西武の先発は4連勝中で広島とは初対決となる菊池。そこで昨季まで西武で13年間コーチを務めた河田コーチは試合前に丸、赤松、鈴木らを集め、自ら菊池の投球フォームをまねて、けん制の癖などをレクチャーしていた。河田コーチは真意を「動かないと崩せない。塁に出たときの策は伝授したつもり」とだけ答えニヤリ。そしてこれが読み通りとなった。

 最速155キロの剛腕の前に3回まで7三振と手も足も出なかった赤ヘル打線だが、4回、先頭の丸が左前打で出塁すると一死後に盗塁成功。右飛で三塁へ進むと、鈴木が適時打を放ち短打2本で効率よく先制点をゲットした。“足技”でかき乱された菊池は7回2失点で降板。サヨナラの場面でも、三塁コーチとして本塁突入を指示したのは河田コーチだった。

 交流戦では毎年苦戦する広島だが、今季はここまで6勝6敗(1分け)で勝率5割。河田コーチは交流戦開幕直後から「パ・リーグで知っている投手について聞かれたら答えているよ」とも語っており、その経験が結果に反映されているようだ。