巨人の選択は正しかったのか。14日の楽天戦(東京ドーム)は、打線が相手エース・則本を打ち崩せず、1―4で敗戦。5連敗で、交流戦も6勝7敗の借金生活に突入した。一方、この日の試合でホームのGナインを差し置き、ファンの視線を独占していたのが、オコエ瑠偉外野手(18)。昨秋のドラフトでオコエの指名を回避した巨人は今“かつての恋人”をどう見たのか。

 好機はつくったが、攻め切れなかった。初回、2回と得点圏に走者を進めるも、あと1本が出ない。先発の田口は苦しみながら5回まで無失点と踏ん張ったが、6回に3安打で逆転を許すと、終盤はあっさり押し切られた。

 試合後、序盤の好機を逃したことについて、由伸監督は「それを言ったらキリがない」。7安打で1点止まりの打線については「あのメンバーがベストだと思ってやっている」とコメントした。

 巨人としては見せ場のない敗戦。ただ、オレンジ色に染まったスタンドは、試合内容そっちのけで、楽天のスーパールーキーに熱狂していた。初回の先頭打席、オコエの名前がコールされると、割れんばかりの歓声が球場全体から湧き起こった。

 ただ、この日のオコエは結局、5タコといいところなし。それでも打席に入るたびにドーム全体が異様な盛り上がりを見せた。球場内で観戦していた巨人関係者も「相手の選手でこれだけ沸くのは、ほかに大谷(日本ハム)ぐらいしかいないでしょう。すごい人気だね」と圧倒されていた。

 オコエに関しては、巨人も“走・攻・守”揃った好素材として、高校3年の夏から徹底マークしていた。夏の甲子園でブレークを果たすと、一躍ドラ1候補に浮上。結果的に、ドラフト本番では投手の桜井を1位指名したが、当時の球団内では、オコエ回避を惜しむ声が少なくなかった。

 では、巨人はオコエを指名すべきだったのか。その答えは「現実的に無理だった」という見方が大勢を占めている。ドラフト会議が開かれたのは、野球賭博問題の発覚直後だった。球団は問題が拡大する可能性も視野に入れ「高卒野手獲り」という冒険的な指名には踏み切れなかった。

 実際、球団が危惧した通りに賭博問題は4投手が退団する事態に発展。また先発陣も世代交代が進まず、深刻な駒不足に悩まされている。即戦力と見込んだ桜井がいまだ二軍暮らしなのは計算外だったが、スカウトの一人は「こんな状況で仮に野手を1位指名していれば、もっと批判にさらされていたでしょう」と上層部の決断を擁護する。野手のスター候補は欲しいが、今秋ドラフトも、投手1位指名の“現実路線”が濃厚だ。

 それでも、プロのユニホームに袖を通し、大歓声を背に受けるオコエの姿はまぶしい。「ウチとは縁がなかったけれど、彼は球界の宝。大きく育ってほしいね」とは前出のスカウト。巨人もほれ込んだスーパールーキーは、この先どんな選手に成長するか。そして、巨人にスーパールーキーはいつ、現れるのか。