巨人が“脱・根性野球”でV戦線を勝ち抜く。高橋由伸監督(41)は12日、帰京後に全体練習の予定を急きょ変更し、休養日とした。故障者が続出している上、厳しい今後の日程を考慮しての措置だが、休日返上が相次いでいた昨季までのチームでは考えられなかったこと。青年監督らしい選手目線の采配は、苦しいチームに一体感を生んでいる。

 本来であれば、この日は甲子園の遠征から帰って午後からジャイアンツ球場で全体練習を行うはずだった。それが休養日になったのだから、ナインは大喜び。「練習日が休みになるなんて、いつ以来ですかねえ」とみな笑顔で帰京の新幹線に乗り込んでいった。

 小さなことでも、巨人にとっては大きな方針転換だ。貧打にあえいでV逸した昨季、当時の首脳陣は夏場を前に休日返上を連発。「打てないのだから練習するしかない」と、スパルタ采配で選手の尻を叩いた。

 だが、打線は一向に上向くことなく、逆に選手たちには疲労とストレスだけが蓄積していった。選手間では「球団上層部へ向けた首脳陣のアピールでしかない」との見方が拡大。ナインと首脳陣の間に溝が広がり、V逸の隠れた原因にもなった。

 当時選手だった由伸監督も、首脳陣の方針には疑問を感じていたのだろう。そもそも、新指揮官は徹底した合理的思考の持ち主だ。今回の予定変更について、チームスタッフは「このところ故障者が増えてきているし、今月は長期の遠征も控えている。今は無理する時期じゃないということ」と意図を説明した。

 指揮官が危惧するように、現在のチーム状況は火の車だ。クルーズが13日に一軍に合流したことは朗報だが、村田も右ヒジに受けた死球の影響を押して出場を続けている。決して若くはない主力陣には疲労の色も目立つ。これ以上、故障者が出るとチームの失速につながりかねない。

 この日、主力の一人は「去年まで選手として一緒にやっていた監督だからこそ、僕らの状態や気持ちをわかってくれている。そういう思いに応えないといけないと、みんな思っています」と指揮官への感謝を口にした。新人監督の勇気ある決断は、巨人が再び上昇カーブを描くきっかけとなるか。