【俺は一軍で待ってるぜ(2)】右肩故障のため二軍調整中の中日・浅尾拓也投手(31)。2010年に72試合に登板してプロ野球記録となる47ホールドをマーク、11年にはセ・リーグMVPにも輝いた男は今、復活に向けて牙を研いでいる。その現状、野球への思い、今季への意気込み…。かつての最強セットアッパー右腕がすべてを語った。

 ――現状は

 浅尾:沖縄キャンプの後半に右肩を痛めてしまって、軽症だと思っていたんですけど…。ようやく4月下旬になってファームの試合に投げられるようになってきましたけど、めちゃくちゃ元気というわけではないですね。その中でどうやって状態のいい日を続けていくかということを課題にしてやっているところです。

 ――痛めた要因は

 浅尾:ケアもちゃんとしていましたし、そこまでは順調に調整できていたんですが、何が原因かは分からない。シート打撃とか実戦形式に入っていくにつれて「あれ? 何かちょっと違うな」って感じて「ここを」「あそこを」こうしなきゃって、早く解決したいがために一気に修正しようと思ってやったことで、さらにひどいことになってしまったのかも。

 ――二軍では大塚投手コーチの指導を受けている

 浅尾:体の使い方について非常に詳しい方なので勉強になりますし「いいときに戻すのではなくて、何とかいいときに近づけられるように」と、僕目線に立って話をしてくれるので、すごく分かりやすいですね。

 ――全盛期のフォームに戻すことは不可能なのか

 浅尾:そこを追い求めると逆に壊しちゃうのかな、と思うので、いかに負担をかけなくて自分の思ったようなボールがいくかを考えながら今はやっている。そもそも理想のフォームだったのか、何がいいのかは分からないです。最初は負担がかかりそうなフォームだと言われてたけど、そのときは1年間どこもケガすることなく投げられてはいた。やっぱり年齢、体のキレや状態などによって今の自分に合ったフォームというのは絶対にあると思うので、それを探しながらやっている。

 ――ストレートの球速が出なくなっていることはどう思うのか

 浅尾:出ないものを無理やり出そうとしてもしようがないです。その中でファウルとか配球面で補っていければ…。

 ――もう150キロの速球は見られないのか

 浅尾:体がいい状態にさえなれば、また150キロ以上の球速を出すことはできると思う。ただ、152、3キロ出したところで打たれたら意味がないかなと思う。全盛期は誰にもあることで、142、3キロでもずっと抑えたらやっぱりいい投手と思われると思うので…。2、3年前のことですが、自分の中ではいいと思っているのに解説者の方たちに全盛期に比べて球速がないとか、そういう言われ方を毎回毎回されたり、新聞とかにも書かれたのが悔しくて。そのとき抑えていたのに速くないといけないのかなと。今は、もういいやって割り切ってます。結果を出して見返すしかないと思っている。

 ――以前は落ち込んでいたのか

 浅尾:考えれば考えるほど、自分はうまくいかないタイプで、寝る前とか(悪いことを)考えてしまったり、眠れないときもあるくらいなので。何回もやり直し、やり直しが続いて、自分の中でもやっていくのがつらいという時があった。もうダメかなと…。正直、引退しようかなと思ったことも何回かあります。

 ――そんなつらい時をどうやって乗り越えたのか

 浅尾:あまり1人でいないようにしてますかね。家族はもちろん、選手や友達も多いので、気晴らしに外食に行ったりしてます。でも、それは根本的にはストレス解消にはならない。野球でのそういうストレスは野球がうまくいったときにたぶん消えるものだと思うので、野球で結果を残すしかない。また痛くなくなって投げられる日が来ると、それを信じて、また次もと希望を持ってやっていくようにしています。

 ――一軍復帰はいつになりそうか

 浅尾:今の状態ではいつまでに上がりたいと言える立場ではない。正直、痛みが全くなくなっているわけではないので。首脳陣と相談しながらやっていきたい。

☆あさお・たくや=1984年10月22日生まれ、愛知県知多市出身。常滑北から日本福祉大に進学。2006年の大学生・社会人ドラフトで中日から3巡目指名を受けて入団した。4年目の10年にはリリーフだけで12勝3敗1セーブ、防御率1・68、日本記録の47ホールドをマークする大活躍でリーグ優勝に貢献、最優秀中継ぎ投手のタイトルも獲得した。中日が球団初の連覇を達成した11年も7勝2敗10セーブ、防御率0・41で2年連続最優秀中継ぎ投手。リーグMVPにも輝いた。12年からは調子を落とし、昨季は1勝1敗3セーブ。今季は開幕から二軍調整が続いている。182センチ、75キロ、右投げ右打ち。