28日、甲子園球場で行われた阪神―巨人の伝統の一戦、第3ラウンドは両軍譲らず延長12回、3―3の引き分けに終わった。巨人は先発の菅野智之(26)が8回1失点と好投するも、守護神・澤村拓一(28)が3―1の9回に2点を失い、またも逃げ切りに失敗。V奪回を果たすためには避けては通れない課題が浮き彫りになった。

 菅野の投球は圧巻だった。

 前回DeNA戦(22日)で中指のマメが潰れ、途中降板してから中5日での登板で影響が心配されたが、進化を遂げた右腕には関係なかった。

 立ち上がりからエンジン全開の菅野は3回に坂本の2試合連続となる5号3ランで援護を受けると、さらに加速。

 5回にその坂本の失策で31イニングぶりに失点しても、動揺はなし。ギャレットの失策などで招いた7回一死満塁の危機も、気迫の連続三振で得点を許さず、8回1失点12奪三振、124球で守護神の澤村にマウンドを譲った。

 ところが、その澤村が大誤算だった。

 先頭のゴメスにソロ本塁打を浴びると、さらに2安打と犠飛でたちまち同点に。前回に続き、菅野の登板日にセーブ失敗。後輩エースの4勝目はまたも泡と消えた。

 それでも菅野に悲壮感はなく、澤村に対しても「本人が一番つらいと思う。これまで助けられてきましたし、また次の試合で頑張っていただきたい」と心中を思いやった。

 一方、背信の澤村は「勝つために送り出してもらったのに…。先週(22日、DeNA戦)もそうだったし、情けない。智之には申し訳ない」と反省しきりだった。

 ただ、試合後は打たれた澤村に同情する声も聞かれた。菅野の登板時に連続でセーブに失敗したのは偶然ではなく、「今年の智之がスーパーすぎるせいもある」(チームスタッフ)というのだ。

 今季の菅野について、他球団スコアラーは「手が付けられない」と口を揃える。実際この日も、セの某スコアラーに話を聞くと「菅野対策? それは“雨”か“マメ”しかない」と、冗談とも本気ともつかない答えが返ってきたほどだった。

 しかし皮肉なことに、そんな菅野の成長が、今季はリリーフ投手の立場を苦しくしているという現象を生んでいる。

 前出のスタッフは「今年は智之が降りた瞬間、相手の目の色が変わるのを感じるんだよ。智之と澤村は同じ右のパワーピッチャー。でも全ての球種でキレや精度は智之が上。そこを力で押そうとするから、智之の球に目が慣れている打者に澤村が打たれるのは当然とも言えるんだよね」と分析した。

 由伸監督は、菅野については「今日もベストな投球をしてくれた」と絶賛。

 4月は33回を投げて防御率0・00と完璧だ。澤村に関しても「本人は反省する部分もあるでしょうが、投げる回数も多いですから、打たれてしまうこともある」と責めなかったが…。

 今後は菅野から澤村に直接つなぐリレーを避けるなど、絶対エースの後を託す投手をどうするかが、今後の巨人ベンチにとっては悩ましい問題となりそうだ。