【赤坂英一「赤ペン!」】広島打線が大変好調にもかかわらず、石井打撃コーチが難しい顔をしている。なぜかと聞くと、「打線は水物。どの選手にも打てない時期が必ずくる。そうなったら、どうなってるんだと叩かれるのは打撃コーチなんですからね」と言う。

 打撃コーチとして常に気にしているのは、打率よりも出塁率だ。ヒットを打つこと以前に、まずは塁に出ることが大切。そこで、選手には常々、こう言い聞かせている。「ヒットを打つことだけがすべてではない」と。

「一番重要なのは、いかに塁に出て、その走者をかえし、得点するかということ。そうやってチームの勝利に結びつけることです。だから、どんなに調子のいい選手でも我慢させるべき状況ではしっかり我慢させてますよ。打線は組織ですから」

 今年は丸、菊池が復調著しいが、これも「打線の中で自分たちの役割に徹することができているからこそ」だという。

「後ろの打つべき人たち(ルナ、エルドレッド、新井)が打てているから、丸もキクも自分の打撃をしていればいい。ヒットを打つことに集中できている。そうやって、選手が自分の役割をまっとうしているから、打線全体が組織としてうまく機能しているわけですよ」

 問題は、「後ろの打つべき人たち」が打てなくなったときだ。16日の巨人戦でルナが右太ももを痛めて登録抹消。昨年、右ヒザを手術したエルドレッドも時々は休ませなければならない。さらに、2000安打が目前に迫っている新井についても「心配なことがある」と石井コーチは言う。

「気になるのは2000本安打を打ったあとなんです。いまは個人的目標があり、ヒットがチームの勝利にもつながってるから、モチベーションが高いでしょう。でも、2000本安打を達成すると、そこでいったん燃え尽きてパタッと打てなくなるケースがあるから」

 史上11位の通算2432安打を記録した石井コーチの指摘だけに、決して杞憂とは言えない。「だからぼくは、2000本達成よりその直後が大事だと思ってました。あらかじめそういう注意をしてたんで、エアポケットに落ち込んで調子を崩したりするようなこともなかったんですよ」

 そうやって現役時代に打撃を極めた石井コーチが、広島打線をどのようにマネジメントしていくのか、興味は尽きない。