V3を目指すソフトバンクが思わぬ苦戦を強いられている。ひと回り目で全球団にエースを当てられる“包囲網”を張られ、3年ぶりの借金3到達、14年ぶりの17失点を喫するなどの不穏な出足。11日現在で5勝6敗2分けだ。

 もっとも、焦りの声は一切出ていない。

 球団フロントも「これで慌てることなんてない。去年だって4月からそんなに勝っていたわけではない。工藤監督は長いシーズンを見据えた戦いをしてくれている」。現在は野手の助っ人が一軍にいない。有事に備えての調査こそ進められているが、現有戦力との兼ね合いを見て静観となっている。

 孫オーナーが掲げるのは史上初のV10の達成でV逸は許されない。それでも余裕さえ漂うのは昨季の戦いで“末脚勝負”への手応えがあるからだ。選手層の厚さは屈指で「うちの本当の強さが出るのは夏場になって」(チーム関係者)という。

 終わってみれば大独走の昨季も、工藤監督は「オールスターまでは5割でもいい」との考えで、序盤は救援陣を無理使いしなかった。4月を終えての貯金は2で、初めて首位に立ったのは6月のこと。一方で6月から9月は勝率7割6分だった。

 現状5月22日まではゴールデンウイークを除き、週5試合が続く。これを指揮官は「2連戦がやりにくいわけではないが、1週間に5試合だったら、先発投手の頭数が揃っていないチームでも回る。6試合だと先発投手が揃っているチームのほうが有利に戦える」とも話す。

 豪華な陣容を考えれば、戦いが厳しくなることこそ大歓迎。今は馬なり状態であとから一気に差す算段だ。