巨人が10日の中日戦(ナゴヤドーム)に7―2で逆転勝ち。再び単独首位に躍り出た。1点を追う7回に打者一巡の猛攻で一挙6点を奪い、試合をひっくり返した。ここまで開幕から一貫してオーダーを組み替えない高橋由伸監督(41)のベンチワークには、ネット裏で「不動の由伸采配」との評価が高まっている。

 風穴をこじ開けたのは、前日まで20打席ノーヒットと不振が続いていた主砲・ギャレットだった。

 2回に21打席ぶりの安打となる二塁打を放つと、0―1で迎えた6回二死二塁の場面で、相手先発・ネイラーから中前へ同点打。チームにとっても、実に25イニングぶりの得点となった。

 1―2で迎えた7回には、二死一、三塁から立岡、坂本、クルーズ、代打・中井が適時打。計6点のビッグイニングを作って逆転し、一気に突き放した。試合後の由伸監督は7回の波状攻撃について「ああいった少ないチャンスで中軸が打ってくれるのは、いいこと」と淡々とコメント。ここまで15試合を9勝5敗1分けで首位の座をキープしていることには「それがどうこうというのはない。ただ、まず自分のチームの形を作ること。選手がいい動きをすること。それが大事」と気を引き締めた。

 開幕から3カード連続勝ち越しでスタートダッシュに成功したものの、ここ6試合は2勝3敗1分け。5~7日の阪神3連戦では今季初の負け越しとなり、今カードの中日3連戦は前日の2戦目まで貧打に苦しんだ。昨年までの原巨人では、しばしば打順を大幅に組み替えてきたところだが…。由伸監督は開幕戦から6番と投手の入る9番以外は、不動のオーダーを貫き続けている。本紙評論家の得津高宏氏は「ああいう我慢強さこそが、彼の最大のストロングポイントなのです」として、こう続けた。

「なかなか打てなくてもじっと我慢して打順をいじらなければ、選手は意気に感じる。“お前たちを信頼しているんだ”という無言のメッセージにつながるわけです。この中日戦だって、由伸監督の耐え忍ぶ姿勢が、それまで休火山状態だった巨人打線の大噴火につながった。これは指揮官と選手の間に、さらに上積みされた強固な信頼関係が出来上がった証拠でもありますよ」

 さらに得津氏は前監督の原辰徳氏(57)との比較について「原前監督は少し打線が不調になったりすると、よくオーダーをコロコロ替えていたでしょう。ああいう“猫の目采配”は成功すれば吉と出る半面、失敗すると選手たちからソッポを向かれてしまう危険性もある。リスクが大きい策なのです。その点、新人監督なのにバタバタせずにどっしり構えている由伸監督には大監督になる要素があると言えます」

 飛び抜けた戦力があるならともかく、苦しい状況でもどっしりしていることは、なかなかできるものではない。不動の由伸監督は、果たしてこのまま“原超えロード”をまい進できるか。