開幕から3カード連続勝ち越しを決めた巨人はその勢いのまま、5日から本拠地・東京ドームで今季公式戦初の“伝統の一戦”阪神3連戦を迎える。周囲の盛り上がりとは対照的に、高橋由伸監督(41)は敵将・金本知憲監督(48)について、ここまで目立った発言をしていない。新指揮官があえて沈黙する理由は――。

 チームは開幕直前まで揺れ動いた野球賭博問題の逆風をはねのけ、スタートダッシュでセ首位を快走中だ。だが、由伸監督は喜びを爆発させることもなく、変わらず淡々とポーカーフェースを貫いている。

 その姿勢は伝統の一戦を前にしても当然変わらない。阪神を率いる金本監督は年齢こそ7歳年上だが、現役時代には東西の人気球団に分かれてシノギを削り合い、今季から新指揮官に就任した者同士。世間からライバル関係を期待されていることは、由伸監督も重々承知のはずだ。それでも、ここまでは金本監督に関して、素っ気ない言葉しか出てきていない。

 直近で言えば、オープン戦で初対戦した3月6日の阪神戦(甲子園)。グラウンドで初顔合わせした虎将の印象を、由伸監督は苦笑い気味に「う~ん、どうですかね。分からないです」。由伸ジャイアンツに対し、時にメディア向け用のリップサービスを交えながら熱い胸の内をさらけ出す闘将・金本監督とはあまりに対照的だ。

 ただ、この「由伸流」は、今のところチームにとってプラス作用を生み出している。球団内からは「相手の誘いに乗らず、また挑発するようなことも口にしない。なぜなら監督自らが相手チームを過剰に意識すると、選手たちが自然体でプレーできなくなってしまう可能性がある。現役時代から泰然自若が持ち味の由伸監督だからこそ、指揮官になっても、闘争心はあえて奥底に秘めグッとのみ込んでいるのだろう」と監督の胸の内を代弁する声も聞こえてくる。

 指揮官の“余計なひと言”でチーム内に動揺を生み出してしまったら、それこそ本末転倒。昨季まで現役を続けていたことで、選手側の気持ちも人一倍分かっているに違いない。

 チーム内や球団内、また読売グループ周辺からも「選手心理を十二分に理解している指揮官」として“黙る勇気”が激賞されつつある。シーズンは始まったばかりで合格点を出すのは早計だろうが、由伸監督の手腕が着実に周囲の評価を上げていることは確かだ。