巨人が評論家陣に異例の珍要求だ。一連の野球賭博問題は久保博球団社長(66)の謝罪会見でひと区切りとなった格好だが、球団内はいまだ混乱が続いている。現場も投打の主軸を欠き、高橋由伸監督(40)を取り巻く状況は極めて厳しい。苦しい船出がもはや避けられないなか、周囲は重圧まみれの新人指揮官を心配。「お願いだからV予想はやめて!」と悲痛な叫びを上げている。

 球団トップの謝罪会見から一夜明けた23日、開幕を2日後に控えた一軍は東京ドームで全体練習を行った。由伸監督の様子は普段と変わらず、表情は淡々。開幕オーダーを尋ねる報道陣に対しても「みんなで予想して。それを見て当日決めるよ」とサラリとかわすなど、努めて平静を装った。

 ただ顔には表さなくとも、青年監督の心中が穏やかであるはずはない。昨年末に端を発した野球賭博問題が再燃。球団全体が大混乱に陥り、中継ぎ左腕と計算していた高木京は失格処分。最終的に球団から解雇となった。

 その一方、復活を期待したキーマンたちも出遅れている。内海は炎上続きで開幕ローテを外れ、正捕手に据える予定だった阿部も、右肩不安などで二軍スタートが決まった。台頭を願った若い岡本も結果を残せず再調整となり、ローテの軸になるはずだったマイコラスも、右肩痛で合流のメドは立っていない。

 オープン戦は序盤に5連勝スタートを飾ったが、終盤失速して、9勝9敗の7位で終了。チーム打率2割2分2厘は11位と貧打は変わらず、同防御率2・89も7位と微妙な数字だった。それだけに球団内ではみな表立っては口にしないものの、「正直、優勝は難しい」という見方が圧倒的だ。

 それでも巨人といえば常勝軍団というイメージが根強いからなのか、今年も評論家の予想はそれほど低くはない。本紙評論家陣では宇野勝氏、大友進氏が巨人Vと予想し、人気スポーツ番組での順位予想コーナーでは江川卓氏、野村克也氏らが、巨人をセの優勝候補筆頭に推している。

 ただ、由伸監督に近い関係者によれば「そういう評論家の“過大評価”が、監督を苦しめている」という。その上で「皆さん、もう少し冷静に予想していただきたい。あれだけ不祥事が続いて、今年のメンバーじゃ、勝てと言われても困るよ。今年はOBの方々も遠慮せず、最下位予想でも結構。逆にそのほうが監督も楽になる」とまさかの“ビリ予想願い”を発した。

 ちなみにこの日、本紙担当記者が紙上で巨人を4位に予想したことを恐る恐る由伸監督に伝えると、指揮官はクールな表情を崩して爆笑。「全然いいよ!」と明るく許してくれたが…。新人監督を心配する周囲の切なる願いは、評論家陣に届くか。